柔軟性より大切なもの
公開日時 2011/06/07 04:00
3つの会社で実績を持つNさんは、面接で自信満々に自分の「強み」をアピールしたのだが…。
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あるメーカーのベテラン人事との雑談をしていて、最近の新卒の話になった。ここ数年、かなりの数の外国籍の新卒を採用したのだが、期待していたほどの影響は出ていないのだという。
「会社をグローバル企業に変えていこうということで、積極的に留学生の人材採用を行ったわけなんですが、若い人ほど、頭の柔軟性があるでしょう?そうすると、どこの出身の人でも、結局うちののやり方に慣れちゃうんですよ」
経営サイドでは、3年ほど経てば、会社を大きく変える力になると信じていたのだそうだが、今のところややアテが外れた感があるとのこと。
「プライベートはその人のエスニックな部分が残るんですけど、働き方の方は、優秀な人ほど、すっかり日本化されちゃうんです。うちのやり方に違和感をもつ人は、転職してしまうという側面もあるでしょうね。向こうの人にとっては、日本企業は外資になるわけですから、日本人に比べると、忠誠心はどうしても低いし、文化的に会社に対する意識の差もありますから」
その人事が最後に言っていたのは「やはり、会社を変えるという意味では、キャリア採用の方がインパクトがありますね」という台詞だった。
実際、良い意味での「剛直さ」は、キャリア採用の転職者に求められるところだ。最近の選考でもこんなことがあった。
営業職のNさん(34歳)は実績が自慢の転職者。8年前と5年前の2度転職を経験しているが、在籍した3つの会社でいずれも月間トップの成績を出したことあるという、凄腕のセールスマンだった。
彼が面接で何より強調したのは、「異業界への転職後も、すぐに結果を出している。どんな会社でも適応する」ということ。Nさんは、自分をカメレオンのように環境に馴染むと面接で表現したこともあったそうだ。
営業は、なんといっても実績がモノを言う世界。面接をした企業の多くはNさんを評価していたが、さすがに全てとはいうわけにはいかなかった。不採用の理由では、「人物的に、求めているタイプではない」というものがほとんどだったが、ある商社は別の理由で彼を不採用にした。
「あまりにも適応力がありすぎる」というのだ。
「転職で採用をするからには、我が社の社員が持っていない発想が出来る人物であって欲しい。すぐに会社に馴染むことが出来るというのは、アピールにならない」
その会社の人事は、そう言ってNさんを興味なしと断じたのだ。
好況時はマンパワーが増えればそれだけ業績につながるので、即戦力、つまり適応力のある人材が求められる、対して、不況期の採用は、仕事量とスタッフの頭数の問題ではなくなる。
業績の厳しい時期にわざわざ人を採る場合、発注しているのは現場でなく、経営であるケースが多い。経営としては、当面の適応力よりも、組織を活性化できる影響力、長期的会社の風土を変えてくれる人物により重きを置くのだ。
無論、こうした事情は応募する会社ごとに違っているし、剛直なだけで、周囲にまったく馴染めないのでは困ったことになる。あくまでバランスのなかでの話だが、新卒ではなくキャリア採用、それもこうした時期に採用している企業の意図は、転職する側として、頭の片隅に置いておかなければならないポイントだろう。
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