厚労省 改正薬事法の検討開始 来年の通常国会に法案提出目指す
公開日時 2011/03/23 04:00
厚生労働省は3月22日、厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会で、薬事法の改正に向けた検討を始めた。海外より遅れることなく新薬を使えるようにするとともに、安全対策を強化する方向で具体策を検討する。同省は年内にも報告書をまとめ、来年12年の通常国会に改正法案を提出したい考えだ。
この検討は、薬害肝炎事件を受け、10年4月にまとめられた対策の提言を踏まえ行われるもの。薬害を防ぐ安全対策と併せ、社会問題化しているドラッグ・ラグ、デバイス・ラグ問題を受け、海外に遅れることなく新薬、新医療機器を承認できる体制づくりを目指す。
22日の初会合では、自由討議が行われた。複数の委員からは、世界初の新薬・機器の承認に向けた施策と同時に十分な安全対策が実施されるように議論すべきとの意見が挙がった。片木美穂委員(卵巣がん体験者の会スマイリー代表)は、新薬、適応外薬も医療保険上のアクセスのしやすさが課題になると指摘した。それら意見を受け同省は今後、承認審査や安全対策を運用する医薬品医療機器総合機構の担当者、省内保険局担当者も同席させることにした。
この中で望月真弓委員(慶応大学薬学部教授)は、新薬のリスクに応じて市販前から安全対策を同省が指示する仕組みが必要だと強調した。今後、生物製剤など一定のリスクのある製品が増えると見られる中、市販前からリスク管理するポイントを明確化し、製薬企業側に注意を促すことによって市販後まで一貫して対策をとれるようにするもので、米国には「REMS」(リスク評価・軽減戦略)という仕組みがある。同省は、同委員の指摘に対し「重要なポイント」だとした。
次回は4月21日午後4時から省内で、安全対策の強化について自由討議する。
部会座長は永井良三・東京大学大学院医学系研究科教授。
委員は次のとおり。
片木美穂 卵巣がん体験者の会スマイリー代表
坂田和江 薬害肝炎全国原告団
澤芳樹 大阪大学大学院医学系研究科教授
鈴木達夫 東京都福祉保健局健康安全部食品医薬品安全担当部長
寺野彰 獨協学園理事長・獨協医科大学学長
長野明 第一三共株式会社専務執行役員
七海朗 日本薬剤師会副会長
花井十伍 全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人(大阪HIV薬害訴訟原告団代表)
羽生田俊 日本医師会副会長
原澤栄志 日本光電工業株式会社取締役専務執行役員
藤原昭雄 中外製薬株式会社医薬安全性本部ファーマコビジランス部部長
堀田知光 国立病院機構名古屋医療センター院長
望月正隆 東京理科大学薬学部教授
望月真弓 慶應義塾大学薬学部教授
山本隆司 東京大学大学院法学政治学研究科教授