アルツハイマー型認知症関連の診断技術で提携活発化
公開日時 2011/01/19 04:00
アルツハイマー型認知症関連の診断技術などを持つバイオベンチャーと大手製薬企業との提携が活発化している。背景には全世界で約2000万人弱と推定される巨大な患者群を抱えながら、これまで薬物治療の選択が限られマーケットとしては非常に魅力的なことがあげられる。しかし、薬効評価に必須の診断分野が必ずしも十分ではないため、こうした関連分野も含めた総合的なアプローチが必要になっているようだ。
先鞭をつけたのは昨年11月、イーライ・リリーがAvid Radiopharmaceuticals社(本社・ペンシルバニア州フィラデルフィア)を3億ドルの一時金と最大5億ドルの達成報奨金で買収するとに発表した案件。Avid社は、アルツハイマー型認知症の病理所見βアミロイドプラークを検出する陽電子放射断層撮影装置(PET)造影剤Florbetapir F18を開発しており、現在FDAに承認申請中だ。
また、年が明けた1月10日、ブリストル・マイヤーズ スクイブが、ニューヨーク・アメリカン証券取引所上場のOPKO Health(本社・フロリダ州マイアミ、Phillip Frost最高経営責任者)とアルツハイマー型認知症の診断技術での提携合意を発表した。
この診断技術はOPKOとScripps研究所、Texas Southwestern Medical Centerの共同研究によるもので、人工ペプチドによるハイスルプットスクリーニングを駆使してアルツハイマー型認知症診断のIgGマーカーを同定するというもの。1月7日にはその詳細が学術誌「Cell」に掲載され注目を集めている。
一方、1月11日には武田薬品が米Zinfandel Pharmaceuticals社(本社・ノースカロライナ州ダーラム、Allen Roses最高経営責任者)と、健常高齢者でのアルツハイマー型認知症リスクを予見するバイオマーカーであるTOMM40アッセイの開発・製造・使用・商業化に関する全世界での独占的ライセンス契約を締結した。同契約でZinfandel社は契約一時金900万ドル、開発達成報奨金最大7800万ドルに加え、販売達成報奨金、ロイヤリティを受け取ることになる。
武田薬品はアルツハイマー型認知症の発症リスクの高い高齢者を対象に同社のチアゾリジン系2型糖尿病治療薬・アクトス(一般名・ピオグリタゾン)の臨床試験を実施しており、今回の提携をこの開発に応用していく考え。アクトスは2012年8月にアメリカでの特許切れを迎える予定だが、もしアルツハイマー型認知症への効果が認められれば、同社にとっては大きな福音となる。