アスピリン+クロピドグレル オメプラゾール追加投与で心血管イベント増加せず
公開日時 2010/10/25 03:00
アスピリンとクロピドグレルの併用療法を受ける患者に、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のオメプラゾールを追加投与したところ、心血管イベントの発症抑制効果は減少せずに、消化管イベントのリスクを低減させることが明らかになった。米Veterans Affairs Boston Healthcare SystemのDeepak L. Bhatt氏らの研究グループが、学術誌「The New England Journal of Medicine」のオンライン版で10月6日報告した。
抗血小板療法において懸念される副作用の1つが、消化管の合併症だ。PPIはリスク削減に有効的と考えられるものの、抗血小板療法の併用療法実施中の患者を対象とした無作為化試験の結果としては示されていない。また最近になって、PPIとクロピドグレルの併用により、心血管イベントの発症抑制効果が減弱すると指摘され始めた。
同研究は、15カ国、393施設から、アスピリンとクロピドグレルの併用療法が適用された3873人が参加。2008年1~12月の間に、これらの2剤にオメプラゾールを与える被験者群か、偽薬を与える被験者群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、消化管の顕性出血または潜在出血+症候性の胃十二指腸潰瘍、浸食、閉塞、穿孔とする、消化管での複合イベント。加えて、安全性の評価項目として、心血管を由来とする死亡、非致死的心筋梗塞、血行再建術、脳卒中の複合とする心血管系項目を設定した。追跡期間は、106日間(中央値)。
◎顕性胃十二指腸出血、顕性上部消化管出血で高い抑制効果
その結果、51人に消化管イベントが発生し、無作為化から180日目の消化管イベント発生率は、プラセボ群で2.9%だったのに対し、オメプラゾール群では1.1%と、オメプラゾール群でリスクが低減していた(ハザード比0.34、95%CI:0.18-0.63、p<0.001)。
消化管の各項目のうち、両群で特に著しい有意差が見られたのは顕性胃十二指腸出血(ハザード比0.12)と、顕性上部消化管出血(ハザード比0.13)だった。
また心血管系イベントは109例発生(プラセボ群54例、オメプラゾール群55例)。180日目の心血管系での複合イベント発生率は、プラセボ群5.7%に対し、オメプラゾール群4.9%(ハザード比0.99、95%CI:0.68-1.44、p=0.96)で、両群に有意差は見られなかった。心血管リスクに分けて行ったサブ解析でも、両群に有意差はなかった。
重篤な有害事象の発生率は、プラセボ群の9.4%に対し、オメプラゾール群は10.1%(p=0.48)と両群に有意差はなく、また全体の有害事象発生率も有意差はみられなかった。しかし、オメプラゾール群では下痢の発生率が3.0%と、プラセボ群の1.8%を有意に上回ることが明らかになった(p=0.01)。
これらの結果から研究グループは、抗血小板薬併用下の患者へのPPIの投与は、「消化管の臨床イベントリスクを有意に削減した」と結論付けた。その上で、「クロピドグレルとオメプラゾールの併用は、心血管イベントのリスクを上昇させないことも示されたが、臨床的意義を確認するには、遺伝子型も調べたより大規模な研究が必要であろう」と付け加えている。