抗血小板療法 急性期脳梗塞治療めぐるトピックス
公開日時 2010/05/17 20:00
脳梗塞急性期治療の経口・抗血小板療法は、アスピリンの投与がグレードA(行うよう強く勧められる)で推奨されており、クロピドグレルやシロスタゾールなどの抗血小板薬の効果も期待されている。一般口演、ポスター発表からトピックスを紹介する。
◎クロピドグレルloading dose small vassel diseaseに有用である可能性も
有効な治療法が確立されていない脳梗塞急性期における進行性のsmall vessel disease(小血管疾患:ラクナ梗塞、BAD、無症候性脳梗塞を含む)に対するクロピドグレルのloading dose(初回大量投与)が有用である可能性が示された。刈谷豊田総合病院神経内科の辻裕丈氏が、自験例を後ろ向きに解析した結果を4月17日のポスター発表で報告した。
解析対象は、2004年1月~09年6月までに発症から72時間以内に入院加療し、small-artery occlusion(小血管病変)に分類された324人。①クロピドグレルloading dose投与群43人②非投与群281人――に分けて、神経症状の増悪をどれだけ抑制できるか比較した。なお、神経症状の増悪は、入院後1週間以内にNIHSS1点以上悪化した症例とした。
その結果、クロピドグレルloading dose投与群で4.7%(2例)だったのに対し、非投与群では14.5%(41例)で、統計的な有意差はみられなかったが(P値=0.073)、クロピドグレルloading dose投与群で、良好な傾向を認めた。なお、出血性合併症は両群ともにみられなかった。
◎シロスタゾール投与 脳梗塞急性期穿通枝 神経症状増悪抑制効果明確に示せず
脳梗塞急性期の穿通枝に対して、シロスタゾールの効果を検討したRCT(ランダム化比較試験)を行った結果、神経症状の増悪抑制効果と転帰の改善について有意差を見出すことはできなかったと、広南病院血管内脳神経外科の近藤竜史氏が16日の一般口演で報告した。
試験は、中大脳動脈穿通枝領域の急性期脳梗塞患者を対象に、シロスタゾールの転帰改善効果と、急性期増悪抑制効果をRCTで前向きに検討することを目的に実施された。
①オザグレルナトリウム+エダラボン+シロスタゾール群(併用群)48人②治療開始~14日目までオザグレルナトリウム+エダラボンで治療後、シロスタゾールに切り替える群(対照群)50人――の2群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、1カ月後の転帰良好な患者の比率。modified Rankin Scale(mRS)で0[まったく症状がない]~2[軽度の障害]となった患者を転帰良好とした。
その結果、1ヶ月後に転帰良好と判断されたのは、併用群で81.3%、対照群では82.0%で有意差はみられなかった。また、副次評価項目に据えた神経症状増悪比率などにも2群間で有意差はみられなかった。
ただ、追加解析で、mRSの経時変化をみると、mRSが改善した症例が併用群で有意に多い(P値=0.049)ことなどから、近藤氏は「シロスタゾールは、穿通枝脳梗塞の発症7日以内の神経症状増悪抑制効果と発症1カ月後の転帰改善効果がある可能性はあるものの、各群50例のRCTでは有意差を示すに至らなかった」と述べた。
◎発症48時間以内の急性期脳血栓症 アスピリンとクロピドグレルの効果はほぼ同等
旭川医科大学神経内科の齋藤司氏は、発症から48時間以内の急性期脳血栓症に対するクロピドグレルの有用性はアスピリンと機能予後に関してほぼ同程度であると、16日のポスター発表で報告した。
解析は、アスピリンを対照薬にクロピドグレルの急性期脳血栓症に対する有用性を検討することが目的。発症24時間以内の急性期脳血栓症患者38例を①アスピリン100mg投与群17人②クロピドグレル75mg投与群21人――に割り付け、治療効果を比較した。評価項目は、入院1週間後のNIHSS点数とmRS。
その結果、NIHSS点数は、アスピリン群で-1.47点、クロピドグレル群では-0.52点と変化し、両群ともに入院時より有意に改善していた。mRSは、アスピリン群で-1.06、クロピドグレル群では-0.81だった。3ヶ月後のmRSはアスピリン群で-1.35、クロピドグレル群で-1.10だった。mRSは、1週間後、3カ月後ともに2群間に有意差はみられず、入院時からの改善効果については、1週間後はアスピリンのみ有意差がみられたが、3カ月後には両群ともに有意差があったとした。