VTE発症予防 抗凝固療法は出血リスクとベネフィットの勘案を
公開日時 2010/02/04 04:00
西宮市立中央病院の左近賢人氏は2月2日、サノフィ・アベンティス主催のメディアセミナーで講演し、死亡率が約3割である静脈血栓塞栓症(VTE)の発症を未然に防ぐことが重要と強調した。その上で、出血リスクとベネフィットを勘案した上で、低分子へパリンなどの抗凝固療法を適切に行うべきとした。
VTEは、一般的に“エコノミークラス症候群”の名称で知られ、「肺血栓塞栓症」と「深部静脈血栓症」の2つの病態がある。発症を予防するための方策として、抗凝固療法を中心とした「薬物的予防」と、弾性ストッキングをはじめとした「理学的予防」がある。
国内では、理学的予防が普及しており、この結果としてVTEの発生率は減少傾向を示している。一方で、致死性肺塞栓症は減少していないことから、左近氏は抗凝固薬を含めた多角的な予防対策が重要とした。
ただ、薬物療法を行うと出血リスクが高まることが懸念されるため、「安全性から控え目な抗凝固療法が望ましい」との考えを表明。「出血リスクと、VTEの発症予防のベネフィットを勘案して治療に当たることが重要」と述べた。具体的には、年齢や手術の大きさなどの出血リスクを症例ごとに判断し、出血リスクが高い場合には、減量や理学療法を選択するなどの対策をとることの必要性を強調した。
また、抗凝固療法を実施する期間については、欧米のデータを引き合いに出し、少なくとも2週間から30日間、VTEの発症リスクは継続すると説明。悪性腫瘍患者などVTEの発症リスクが高い患者であれば1カ月の投与も必要となるが、「そうでなければ1カ月間は必要ないのではないか」と自身の見解も述べた。
なお、「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」は現在改訂作業中で、今年中にも改訂される見通しだ。