孫子の兵法が教える7つのMR必勝パターン
公開日時 2010/02/17 04:00
『孫子』と『戦争論』
『孫子』(孫子著、金谷治訳注、岩波文庫)を読んだMRと、読んでいないMRとの差は、その目の輝きに表れる。
勝つ方法(戦略・戦術)を学ぶためのテキストといえば、『孫子』と、「戦争は他の手段をもって行う政治の継続にほかならない」と喝破したクラウゼウィツ(クラウゼヴィッツ)の『戦争論』(カール・フォン・クラウゼヴィッツ著、篠田英雄訳、岩波文庫、上・中・下巻)ということになっているようだが、その書かれた時代の大きな隔たりにもかかわらず、戦争に対する基本的な考え方において、この両者に深い共通性が見られることは驚くほどである。もっとも、簡潔な『孫子』に対して、難解で鳴る『戦争論』という違いはあるが。
『孫子』の影響力
『孫子』の著者については、春秋時代の孫武(紀元前6世紀ごろ)とする説と、戦国時代の孫*(そんぴん。紀元前4世紀ごろ)とする説があったが、近年、この論争に劇的な終止符が打たれることとなった。1972年に山東省臨沂県銀雀山の漢代の墓から、私たちが知っている13編から成る「孫子」と、古書に名をとどめるのみであった幻の兵書「孫*(そんぴん)兵法」の竹簡が同時に発見されたことによって、『孫子』の著者は孫武だということが明らかになったのである。
[*「そんぴん」の「ぴん」という漢字は、偏(へん)が「月」、旁(つくり)が「賓」]
古来、『孫子』に親しんだ武将は少なくない。今日、私たちが『孫子』を手にすることができるのは、三国志の雄、曹操が自ら「孫子」を研究し、注釈を付けたものが伝えられてきたおかげである。曹操は、この注釈書を大量に筆写させて部下の幹部教育の教科書(『魏武帝註孫子』)としたのである。『曹操注解 孫子の兵法』(中島悟史著、朝日文庫)は、口語訳の孫子の本文と曹操の注釈、それに著者の解説が有機的に響き合う好著である。また、武田信玄が『孫子』に傾倒し、「風林火山」を旗印としたことは広く知られている。
孫子の7つの必勝パターン
何はともあれ、孫子の声に耳を傾けてみよう。
●算多きは勝ち、算少なきは勝たず(始計篇)
ちゃんとした見通しがあれば戦いに勝つが、見通しがあやふやであれば勝利はおぼつかない。まして見通しが全然ないようでは、勝てるわけがない。
●兵は拙速を聞くも、未だ巧(こう)の久しきを睹(み)ざるなり(作戦篇)
戦争は、多少手際が悪くても、素早く勝負をつける方がよい。戦術が優れていても、それが長く続くという保証はない。現在では、「兵は拙速を貴ぶ」と少し変えて使われることが多い。
●百戦百勝は、善の善なるものに非(あら)ざるなり(謀攻篇)
百回戦って百回勝ったとしても、それは最上の勝ち方とは言えない。戦わずに敵を屈服させることこそ最上の勝利なのである。
●彼を知り己(おのれ)を知れば、百戦して殆(あや)うからず(謀攻篇)
敵の状況をよく知っており、味方の実力についてもよく知っていれば、百回戦っても危ういことはなく、絶対に負けない。
●その疾(はや)きこと風の如く、その徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し(軍争篇)
疾風のように動いたかと思えば、林のように静まりかえる。火のように猛然と襲いかかったかと思えば、山のように微動だにしない。
●囲師(いし)は周(しゅう)するなかれ(九変篇)
テキストによっては、「師を囲めば必ず闕(か)く」。敵を取り囲む時は、どこか逃げ道を開けておくべきで、完全に包囲してはならない。
●爵禄(しゃくろく)百金を愛(お)しみて敵の情を知らざる者は、不仁(ふじん)の至りなり(用間篇)
恩賞や費用を出し惜しんで、敵の情報収集を怠るようでは、味方に申し訳が立たない。
株式会社ファーマネットワーク
榎戸 誠
●[ご質問・ご意見・ご要望などは、お気軽にenokido.makoto@pharmanetwork.jpへ]