中医協総会 民主党政権で初の診療報酬改定へ 診療・支払い各側が意見
公開日時 2009/11/26 04:02
中医協総会が11月25日に開かれ、診療、支払いの各側が10年度診療報酬改定に関する意見書を提示した。診療側は医療崩壊の主たる原因が02年度から4回連続で続いたマイナス改定にあるとし、医療再生に向けて、「入院基本料を初めとする診療報酬の大幅引上げによる医療費全体の底上げ」を強く求めた。一方、支払い側は低迷する景気雇用環境などから患者負担増、保険料負担増、保険者財政の更なる悪化を招く診療報酬引上げを行う環境ではないと主張。その上で「限られた資源を効率的かつ効果的に配分」すべきとし、医療崩壊が指摘される産科や救急、勤務医などを重点評価して対応すべきと訴えた。
診療報酬の改定率で各側の意見の隔たりは大きいが、遠藤久夫会長(学習院大教授)は、「意見の一致はみられていないが、(中医協としての意見を)公益委員を中心にまとめ、次回以降に諮りたい」と引き取った。意見の取りまとめは12月上旬の予定。改定率の決定は内閣の権限だが、診療報酬の審議機関としての意見を厚労相に伝え、反映を求める。
◎民主党政権を意識した発言相次ぐ
10年4月の診療報酬改定は政権交代して初めて実施される。このため、この日は各側から民主党政権を意識した発言も相次いだ。診療側の鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事)は、「今回の政権交代は日本の社会のあり方を変えてほしいということ。厳しい経済状況だからこそ、医療などの社会のセーフティネットを確立してほしいということ」と述べ、セーフティネットの役割を果たせるよう診療報酬を引上げるべきと訴えた。
安達秀樹委員(京都府医師会副会長)も、「日本の社会、国家財政の組み換えがこの政権の根幹だ」「患者負担増や保険者財政の問題で診療報酬引上げができないというのは堂々巡りになる。どこに結論を持っていけばいいのか」などと指摘。その上で、患者負担を3割から2割に下げて、診療報酬を引き上げても患者負担に影響が出ないようにする一方、財源が足りない分は公費で穴埋めするといった大胆な見直しをすることが「政権交代の意味」と話した。嘉山孝正委員(山形大医学部長)は、医療崩壊を改善するには最低でも国庫負担で4000~6000億円(改定率で約4~7%の引上げに相当)が必要としたほか、財政ありきの医療政策からの転換を求めた。
一方、支払い側の白川修二委員(健保連常務理事)は、民主党政権が医療費引上げを掲げていることは認識しているとしたものの、「民主党は国民の視点や、生活者を大切にしたいとの政策目標をもっている」と指摘。「医療は非常に重要だが、国民は医療以外の生活もある。所得が減り、失業率が高まっている状況で医療分野だけ負担を増やすのは違うのではないかということだ」と述べ、診療報酬の引上げに慎重な姿勢を示した。