米上院は11月 21 日、医療改革法案の審議開始(open a floor debate)を決定した。投票結果は60対39で、民主党はぎりぎりまで支持表明しなかった3名の議員を含め、全議員が支持票を投じた。これに対し野党・共和党は審議開始にさえも反対、賛否がくっきり分かれる結果となった。議論白熱は必至の見通し。
オバマ大統領は投票結果を聞いてさっそく声明を出し、「上院が医療保険改革法案の審議開始に向けて一歩を踏みだしてくれたことに感謝する。保険会社支配の保険制度を終わらせ、医療費を抑制しつつも、医療保険に安定と安心をもたらし、無保険者には保険を給付できるようにする改革のための歴史的な一歩だ」と述べた。
これに対し共和党は、審議開始にすらも難色を示しており、“ほぼすべての米国民に医療保険の購入を義務付け、3,000万人を超える無保険者への給付費用の不足分は保険者と高額所得者への新税でまかなう”と計画していると指摘。法案を、「税金喰いの『怪物』」と呼び、インタネットやラジオを通じて「医療改革法案は医療費を下げるどころか、保険料も税金も大幅に引き上げる結果をもたらす。しかも高齢者への給付を大幅にカットするのは容認しがたい」と激しい批判を展開している。
ただ、民主党も一枚岩ではない。アーカンサス選出のBlanche Lincoln議員、ルイジアナ選出のMary Landrieu議員はともに、投票ぎりぎりまで賛否を明らかにせず、最終的に審議開始に支持票を投じたものの、「審議開始を支持したからといって、最終法案を支持すると決めたわけではない」と依然として反対も辞さない構えだ。上院での議論は波乱が予想される。
投票終了後、上院はサンクスギビングで休会し、議員はそれぞれの地元に。審議は休暇明けの来週から開始される見込みである。
◎上院法案もメディケア予算は大幅削減の方向
法案支持派は上院での審議を年内に終え、1月からは下院を通過した法案との調整・統合を開始したい構え。両法案には共通点も多く、その一つがいわゆるexchangeと呼ばれる自営業や小零細企業のための医療保険購入制度である。ここに行政主導の公的保険を選択肢に加えるべきか否かをめぐっては激しい論戦が予想されている。相違点は、下院の法案では雇用主に保険給付を義務付けるとしているが、上院では雇用主に義務付けないかわり、雇用主から公的保険への拠出を求めていること。また下院では改革の財源捻出のため、高額所得者への所得税を増税する計画であるのに対し、上院ではいわゆるキャデラック・プランと揶揄されている高級医療保険への課税を提案しつつ、同時に、メディケア対象年齢の高齢者のうち、個人で20万ドル、夫婦で25万ドルを超える年収を得ているものに対するディケア増税を合わせて提案している。しかし、上下両院ともメディケア予算の大幅な削減を盛り込んでいる点は共通だ。
(メディカルジャーナリスト 西村由美子)