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厚労省・木下経済課長 医療再生に向け「国民の理解と参加が必要」

公開日時 2009/10/21 04:02

厚生労働省医政局経済課の木下賢志課長は10月20日、東京都内で開かれたIMSジャパンヘルスケア・シンポジウム2009で基調講演し、民主党政権が掲げる医療崩壊の是正に向けて、「(医療への)国民の理解と参加が必要だ」と強調した。医療従事者の過酷な労働環境などに対する国民の理解や評価が進むことで、医療従事者のモチベーションの向上や医療資源の有効活用につながるとの見方を示し、「どう火をつけるかだ」と語った。厚労省で医療政策を担当する足立信也政務官も10月10日に大分県で行った講演とその後の囲み取材で、医療に対する国民の理解向上を課題のひとつに挙げた。現政権の医療政策では、「国民の理解」がキーワードのひとつとなりそうだ。

また、木下課長は、「これからの医療は製薬企業、医薬品卸を含めた関係者が医療との関わりをどうやって地域に作り、どうやって関わりを高めていくかだ」とも強調。医療再生のプレーヤーに製薬企業や卸も挙げ、地域医療支援などの役割に期待を寄せた。

一方、現政権が掲げる医療費の引き上げについて木下課長は、医療費が公費(税)、保険料、患者窓口負担で構成されていることから、「負担とのバランスをどうとるかは新政権でも悩むところ」と指摘。特に「保険料負担増が出てくる。ここをどう議論するかが課題になる」と見通した。民主党はこれまでに、10年4月の診療報酬改定で本体部分のプラス改定を行う方向とともに、入院の診療報酬を増額する方針を示している。木下課長は10年度政府予算の概算要求で、「入院の診療報酬の増額を要求した」と話した。

また、入院医療に関連して、入院患者の希望が「完治まで入院したい」から「(ある程度で退院して)自宅から通院しながら治療・療養したい」に変化していることから、「この患者の気持ちにメーカーがどう対応するのか。対応が求められる」と語った。がんや精神疾患系に入院患者が多いことを紹介しながら、革新的新薬によって在宅生活にスムーズな移行ができるようになることに期待感を示した。

一方、木下課長は日本の医薬品産業の方向性にも触れた。新型インフルエンザワクチンの3分の2を海外企業から買い付けたことを引き合いに、「日本だけでは賄えなかった。医療の安全保障という意味で、これでいいのかどうか」と投げかけた。その上で、「国内産業を保護するのではなく、日本市場活性化の取り組みをしなければならない」と語り、海外企業には日本市場により参入してもらう一方で、国内企業にはこれまで以上に競争力をつけてもらう必要があるとの認識を示した。

特許期間中の新薬の薬価改定を猶予する「薬価維持特例」の実現を柱とする薬価制度改革に関しては、「維持特例はメーカーを儲けさせるだけとの指摘があるが、非常に断片的な見方」と語った。木下課長によると、維持特例によって単年度に薬剤費が1000億円膨らむ一方で、未承認薬・未承認適応の約350品目で計4000~5000億円の開発費用がかかるとの試算を紹介しながら、「維持特例は収益拡大につながらない。できるだけ早く臨床現場に良い薬を届けるとの行動であり、関係者の評価を深めたい」と話した。維持特例については講演したエーザイの内藤晴夫社長も、「実現を伏してお願いしたい」とし、「(薬価改定による)循環的な薬価下落は、日本がイノベーションに対してフレンドリーではないとの印象を国内外に強く植え付けている。実現すれば、日本がイノベーションを重視すると国際的に明示する最重要のメッセージになる」と強調した。

 

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