急性冠症候群(ACS)患者における抗血小板薬のTicagrelor+アスピリンの併用療法は、アスピリン+クロピドグレルの併用療法を上回る心血管イベントの発症抑制効果があることが分かった。学会2日目の8月30日に開かれたHOTLINEセッションで、Ticagrelorのフェーズ3試験である「PLATO」試験の結果が報告される中で、明らかになった。懸念されていた出血リスクの増加については、併用療法の2群間で有意差がみられなかった。
(スペイン・バルセロナ発 望月英梨)
「PLATO」試験は、Ticagrelorの国際共同フェーズ3試験。非ST上昇型のACS患者やST上昇型の心筋梗塞を含む中等度~高度ハイリスク患者1万8624人が対象。アスピリンにTicagrelorまたはクロピドグレルを上乗せし、治療効果を比較した。現行のガイドラインでは、ACS患者において、アスピリン+クロピドグレルの併用療法がスタンダードとなっている。
▽Ticagrelor投与群(loading dose(初回大量投与):180mg、維持用量:90mg×2回/日)9333人▽クロピドグレル投与群(loading dose:300~600mg、維持用量:75mg/日)9291人――の2群に分け、6~12ヵ月間治療を行った。主要評価項目は、心血管死亡/心筋梗塞/脳卒中の発症の複合エンドポイント。
その結果、主要評価項目のイベントはクロピドグレル上乗せ群で11.7%だったのに対し、Ticagrelor上乗せ群では9.8%となり、Ticagrelor投与群で有意に発症を抑制した。(P値<0.001)
一方で、重大な出血についてはクロピドグレル投与群で11.20%、Ticagrelorは11.58%で、有意差はみられなかった。
結果を報告したスウェーデンのLars .C.Wallentin氏は、「Ticagrelorは、ACS患者の急性期と長期的な治療における虚血性イベントの継続的な予防において、クロピドグレルよりもより効果がある」とコメントした。試験の結果は同日付の「The NEWENGLAND JOURNAL OF MEDICINE」に掲載された。
■活性代謝物であるのが特徴―迅速な効果発現に期待
Ticagrelorは、チエノピリジン系薬(ADP受容体阻害薬)の1つ。血小板のADP受容体であるP2Y12と強力に結合することで、血中のADPと受容体の結合を阻害することで、血栓の形成を抑制する。既存の薬剤としては、クロピドグレルやプラスグレルがある。これらの薬剤はいずれもプロドラッグで、体内で代謝を受けて活性代謝となる。
これに対し、Ticagrelorは、すでに活性代謝物であることから、迅速な効果発現に期待できる。また、最近クロピドグレルでは、肝臓の薬物代謝酵素であるCYP2C19の遺伝子多型により、効果が減弱しないこともメリットとされている。現在、日本ではフェーズ2の準備中という。