もう一つの人生を体験する方法
公開日時 2009/07/31 00:00
MRと自伝もう一つの人生を体験する一番いい方法は、先達の自伝を繙くことである。私は、その人物が何を成し遂げたかということよりも、どのように考え、行動したかということの方に、より興味を惹かれてしまう。孤高の改革者『折りたく柴の記』(新井白石著、桑原武夫訳、中公クラシックス)は、江戸時代中期の儒学者、政治家である白石(1657~1725)の自伝であるが、日本人による最初の本格的な自伝と言ってよいだろう。将軍の信頼厚い最高政治顧問として、幕政改革に精根の限りを尽くすが、「このこと(通貨改良)は天下や後世の大きな災いを取り除くことであるから、自分がなんとしてでも実現したいと、心を一つに思い定めて、自分の意見を明らかにした」というくだりからも、白石の強い責任感が伝わってくる。多くの改革反対者に囲まれた...