ヤクルト本社と慶應大 抗がん剤バイオマーカーの共同開発に着手
公開日時 2009/04/15 23:00
ヤクルト本社と慶應義塾大学は4月15日に会見を開き、進行・再発大腸がんの
治療薬カンプト、エルプラットの効果を予測するバイオマーカーの開発に向け
たプロジェクトに乗り出したと発表した。結腸・直腸がん患者の血液検体を用
いた製造販売後臨床試験を実施中で、カンプトは今年1月、エルプラットにつ
いては今月にスタート。バイオマーカーを活用して抗がん剤が効く患者のみを
選別することができれば、治療成績の向上や重大な副作用の回避、医療経済な
どに貢献できるものと期待を寄せている。
同プロジェクトは「S100-A10」という特定のタンパク質が両剤の効果を予測す
るバイオマーカーとして活用できるかを検証するほか、新しいバイオマーカー
を発見することを目指す。S100-A10は試験管内での大腸がん細胞を用いた基礎
研究で、エルプラットが効きにくい細胞で高発現していることが確認されたタ
ンパク質。
この結果を踏まえ、現在、2つの臨床試験「CR0801」「CR0802」を全国16~19
施設を対象に実施している。前者はエルプラットをファーストラインで投与し
た患者60例、後者はカンプトをセカンドラインで投与した患者90例の患者の血
液検体を用いて、臨床上の効果との相関関係を調べる計画。
プロジェクトの研究計画責任者である慶應義塾大学医学部・薬剤部の谷河原祐
介教授は会見で、「カンプトとエルプラットの生存期間は20ヵ月、有効率は50%
だが、これらはあくまで平均値。効果が得られない患者もおり、実際に使って
みるまで薬剤の治療効果は予測できないことが問題」と述べ、治療効果の予測
による個別化医療の実現に意気込みを示した。