中医協は5月15日、新薬15成分19品目を薬価収載することを了承した。既存治療で効果不十分な関節リウマチに対する経口JAK阻害薬ゼルヤンツ錠(ファイザー)や治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん治療薬としてスチバーガ錠(バイエル薬品)などがあり、薬価収載予定の24日以降、各社から販売される。
▽イノベロン錠100mg、同200mg(成分名:ルフィナミド、会社名:エーザイ)
効能・効果:「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないLennox-Gastaut 症候群における強直発作及び脱力発作に対する抗てんかん薬との併用療法」
薬価:100mg1錠79.70円、200mg1錠130.40円(1日薬価1173.60円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数147人、販売金額0.46億円
市場性加算(1)10%:加算理由「希少疾病医薬品であり、比較薬は市場性加算を受けていないことから、加算の要件に該当する。ただし、作用機序は異なるが、同様の適応を有する医薬品が既に薬価収載されていることから、加算率10%が妥当である」
適応の疾患は、就学前から発症する難治性のてんかんで、推定国内患者数は3600人程度。
▽ノウリアスト錠20mg(イストラデフィリン、協和発酵キリン)
効能・効果:「レボドパ含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるウェアリングオフ現象の改善」
薬価:1錠760.70円
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数1.5万人、販売金額62億円
有用性加算(2)20%:加算理由「アデノシンA2A受容体拮抗薬という既存薬とは異なる作用機序を有する新たな治療の選択肢となり得る、国内臨床試験成績で示された本薬のウェアリングオフ現象の改善効果は臨床的に意義のあるものと判断する―などと評価されていることを踏まえると、臨床上有用な新規の作用機序を有することが客観的に示されていると考える」
▽レグテクト錠333mg(アカンプロサートカルシウム、日本新薬)
効能・効果:「アルコール依存症患者における断酒維持の補助」
薬価:1錠50.10円(原価計算方式で算定)
市場予測(ピーク時10 年後):投与患者数4.0万人、販売金額20.5億円
加算なし
エタノール依存で増加したグルタミン酸作動性神経の活動を抑制。類薬の抗酒薬にはジスルフィラム、シアナミドがあるが、中枢神経に作用して飲酒の欲求を抑える国内初の薬剤。10年5月に厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」から開発要請されていた。1回2錠を1日3回投与する。
▽アコファイド錠100mg(アコチアミド塩酸塩水和物、ゼリア新薬)
効能・効果:「機能性ディスペプシアにおける食後膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感」薬価:100mg1錠36.20円(原価計算方式で算定)
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数75万人、販売金額68億円
加算なし
1回1錠を1日3回投与する。アステラス製薬との共同開発で、共同販売する。
▽オングリザ錠2.5mg、同5mg(サキサグリプチン水和物、協和発酵キリン)
効能・効果:「2型糖尿病」
薬価:2.5mg1錠110.20円 5mg1錠166.00円(1日薬価166.00円)
市場予測(ピーク時10 年後):投与患者数36万人、販売金額216億円
加算なし
現在併用が想定されるすべての既承認の経口血糖降下薬との併用が可能。通常5mgを1日1回投与。大塚製薬が開発、承認申請したが、協和発酵キリンに開発・販売権が継承された。
▽ゼルヤンツ錠5mg(トファシチニブクエン酸塩、ファイザー)
効能・効果:「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」
薬価:1錠2539.00円(1日薬価5078.00円)
市場予測(ピーク時8年後):投与患者数4.3万人、販売金額597億円
加算なし
細胞内のチロシンキナーゼであるJanus Kinase(JAK)ファミリーを阻害する。リンパ球の活性化、機能分化および増殖に重要な役割を果たすシグナル伝達を抑制することで抗リウマチ作用を発揮する。通常5mgを1日2回経口投与する。
武田薬品とコ・プロモーションを行う。 同剤は感染症リスクなど慎重な使い方が必要なため、ファイザーは同剤を流通管理品目とし、使用医師、医療施設への納入を制限するほか、4000例を対象とする全例調査し、有効性、安全性などを検証する。
▽スチバーガ錠40mg(レゴラフェニブ水和物、バイエル薬品)
効能・効果:「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」
薬価:1錠5424.30円(1日薬価1万6272.90円)
市場予測(ピーク時4年後):投与患者数4.8千人、販売金額33億円
加算なし
腫瘍の血管新生や増殖に関与する各種キナーゼのリン酸化を阻害し、腫瘍の増殖を抑制する。通常1日1回160mgを食後に3週間連日投与し、1週間休薬する。バイオマーカーの診断などは伴わないが、手術や他の薬物治療で効果不十分な症例が対象となる。
▽メトレレプチン皮下注用11.25mg「シオノギ」(メトレレプチン遺伝子組換え、塩野義製薬)
効能・効果:「脂肪萎縮症」
薬価:11.25mg1瓶3万3877円(原価計算方式で算定)
市場予測(ピーク時8年後):投与患者数68人、販売金額8.4億円
加算なし
脂肪委縮症は、脂肪組織の消失や著しい減少を特徴とし、それにより脂質や糖代謝の異常などを引き起こす希少疾患。推定国内患者数は100人程度。
▽ボルベン輸液6%(ヒドロキシエチルデンプン130000、フレゼニウスカービジャパン)
効能・効果:「循環血液量の維持」
薬価:6%500ml1袋970円(原価計算方式で算定)
市場予測(ピーク時8年後):投与患者数111万人、販売金額16.8億円
5%減算(営業利益率を17.4%で算定):減算理由「HES(ヒドロキシエチルデンプン)製剤自体は約40年にわたり国内外の臨床現場で用いられており、革新性が高いとはいえない」とした上で、最大投与量の引き上げの有効性と安全性の確認を治験で行ったことを評価し、5%の減産率にとどめた。
▽プラリア皮下注60mgシリンジ(デノスマブ遺伝子組換え、第一三共)
効能・効果:「骨粗鬆症」
薬価:60mg1ml1筒2万8482円(原価計算方式で算定)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数40万人、販売金額230億円
加算なし
6カ月に1回投与。同薬はヒトモノクローナル抗体で、破骨細胞の形成や機能にかかわる蛋白質「RANKリガンド」を標的とする世界初の抗体医薬品。同じ成分の120mg製剤は「ランマーク皮下注120mg」の製品名で12年4月から多発性骨髄腫による骨病変および固形がん骨転移による骨病変の治療で使用されている。
▽エボルトラ点滴静注20mg(成分名:クロファラビン、サノフィ)
効能・効果:「再発又は難治性の急性リンパ性白血病」
薬価:20mg20ml1瓶14万0248円(1日薬価9万7673円)
市場予測(ピーク時3年後):投与患者数58人、販売金額2.7億円
市場性加算(1)10%:加算理由「希少疾病用医薬品であり、比較薬は市場性加算を受けていないことから、加算の要件に該当する。ただし、類似の薬理作用を有する医薬品が既に薬価収載されていることから、加算率10%が妥当である」
▽アーゼラ点滴静注液100mg、同1000mg(オファツムマブ遺伝子組換え、グラクソ・スミスクライン)
効能・効果:「再発又は難治性のCD20陽性の慢性リンパ性白血病」
薬価:100mg5ml1瓶2万7590円、1000mg50ml1瓶26万7502円(1日薬価3万7051円)
市場予測(ピーク時2年後):投与患者数140人、販売金額8億円
加算なし
市場性加算(1)10%:加算理由「希少疾病用医薬品であり、比較薬は市場性加算を受けていないことから、加算の要件に該当する。ただし、作用機序が異なるが、同様の適応を有する医薬品が既に薬価収載されていることから、加算率10%が妥当である」
▽ノーモサング点滴静注250mg(ヘミン、シミックホールディングス)
効能・効果:「急性ポルフィリン症患者における急性発作症状の改善」
薬価:250mg10ml1管10万1273円(原価計算方式で算定)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数30人、販売金額0.5億円
加算なし
ポルフィリン症は、ヘムの合成経路にかかわる酵素の遺伝子異常に引き起こされる疾患で、1920年から2008年の間に国内351例の報告がある。本来体内に蓄積されないはずのヘムの前駆体やポルフィリン体の過剰産生により、急性ポルフィリン症は、腹痛や便秘、手足のしびれや麻痺といった神経症状を引き起こす。同剤は、ヘムの前駆体やポルフィリン体の過剰産生を抑制し、症状を改善する。
▽アクテムラ皮下注162mgシリンジ、同皮下注162mgオートインジェクター(トシリズマブ遺伝子組換え、中外製薬)
効能・効果:「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」
薬価:162mg0.9ml1筒3万8056円(1日薬価2718円)、162mg0.9ml1キット3万8200円(1日薬価2729円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数1.8万人、販売金額163億円
規格間調整のみの算定における特例(医療上の有用性)5%:加算理由「類似薬が1時間程度をかけて点滴静注により投与しなければならないのに対し、本剤は短時間で投与が可能であること、頻回投与の必要もないこと等を踏まえると、高い医療上の有用性を有することが客観的に示されていると考えられる」
生物学的製剤で、2週間の間隔で皮下注する。既存は点滴静注用製剤。
▽ネオキシテープ73.5mg(オキシブチニン塩酸塩、久光製薬)
効能・効果:「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁)」
薬価:73.5mg1枚189.40円(1日薬価 189.40円)
市場予測(ピーク時9年後):投与患者数20.4万人、販売金額69.6億円
加算なし
同成分で経口剤はあるが、貼付剤は初めて。貼付剤によって薬物血中濃度の安定化、副作用の軽減を期待する。1日1枚。
【訂 正】レグテクト錠の記事中で、記述に誤りがありました。正しくは、「エタノール依存で増加したグルタミン酸作動性神経の活動を抑制」です。下線部を訂正しました。(修正済 5月20日 10:35)