日本フォーミュラリ学会の今井博久理事長は10月22日に東京大学構内で開催された第2回学会学術総会で基調講演し、「地域フォーミュラリの実施ガイドライン（ＧＬ）」を11月1日付で学会ＨＰを通じて公開することを明らかにした。実施ＧＬは厚労省が7月7日付で発出した「フォーミュラリの運用について」（いわゆる七夕通知）を踏まえたもの。フォーミュラリの作成・運営・評価の指針に位置づけられる。このうち収載薬については、「推奨薬」と「オプション」のカテゴリで定義。推奨薬は、「先発医薬品（先行品）は推奨薬にならない」とした。一方、オプションは、「ある特定の状況では使用される医薬品」とし、先発・後発いずれも定義されるが、「地域フォーミュラリの推奨薬にはならない」と強調した。

今井理事長は厚労省通知（いわゆる七夕通知）の意義について、「地域フォーミュラリの定義と作成主体を厚労省が明確化したことは大きい」と説明。「これで無意味な論争は完全に終わった」と強調した。通知では実施主体（誰が担うか）について、地域の三師会（医師会、歯科医師会、薬剤師会）が連携していると明記されている。今井理事長は、具体的な事例として、大阪市八尾市、茨城県つくば市などをあげながら、「主に薬剤師会が中心になって始動し、医師会、歯科医師会を巻き込んでいる」と説明した。

◎地域フォーミュラリの実施・実施準備地区は全国20以上

一方、通知で示した、地域の中核病院が主導し、地域の医師会・薬剤師会と連携している実施主体については、仙台市の事例をあげ、「まだ病院間のフォーミュラリで地域に広がっていない」と述べながらも、「今後の広がりに期待したい」との認識を示した。さらに地域医療連携推進法人による実施主体については、日本海ヘルスケアネットのほか、広島県備北地区、北海道上川北部、秋田県潟上地区などで地域フォーミュラリの動きが始まっていると報告した。なお、今井理事長は地域フォーミュラリの実施・実施準備地区が全国20以上あると明かした。

◎収載薬の選定「原則、後発医薬品が対象」　先発医薬品は「推奨薬」にならない

収載薬の選定について今井理事長は、「原則、後発医薬品が地域フォーミュラリの収載の対象製品になると明記された」と指摘。ただし、「後発品の中で一番安いものを選ぶという意味ではない」とも解説した。さらに、学会の実施ＧＬでは、「推奨薬」および「オプション」というカテゴリに大別したと紹介。特に、「オプション」について今井理事長は、モデル・フォーミュラリにおけるカテゴリの表記に統一性が無かったとし、言葉を統一し、「患者の治療上、必要であるという条件下で使用するという意味」と定義を明確化したと説明した。

このほか現状の病院フォーミュラリでは、「先発薬と後発薬が混合されているケースや、先発薬を“推奨薬”としているケースがある」と指摘。「今後は、明らかになった定義に従って収載薬の選定を明確にする必要があるだろう」と述べた。

◎地域フォーミュラリの導入　「先入観や誤解がまん延」実施ＧＬの活用を

地域フォーミュラリの導入・運用、評価についても触れた。厚労省通知では地域フォーミュラリの導入について、「必要に応じて説明会を行うなど、丁寧に地域の関係者に対して説明を行う必要がある」としていることに対し、「現実問題として先入観、誤解がまん延している」として、学会の実施ＧＬの活用を促した。また、運用について通知では「後発医薬品の薬価収載（年2回）や、診療ＧＬの改訂などの疾患領域や薬物療法に変化が生じた場合に更新する」としていることに触れ、「モデル・フォーミュラリは年2回以上改訂を行っている」と述べた。さらに、評価については、医薬品データの解析などについて学会としての公平性・透明性ある「データ提供・解析についてのＧＬ」や「指針」などを提示したいとも強調した。

◎厚労省・太田薬事企画官「医薬品の専門家としての薬剤師の知見を発揮」

その後のシンポジウムでは厚労省医薬・生活衛生局総務課の太田美紀薬事企画官が登壇し、厚労省通知に沿って地域フォーミュラリの考え方を解説した。太田薬事企画官は、薬剤師がフォーミュラリ作成に関わることで期待される効果に言及。「医薬品の専門家としての薬剤師の知見を発揮」する必要を強調し、医師など他職種との協働の場への参画を促し、多職種連携の向上に努めるべきとした。さらに、医薬品の適正使用の推進にも寄与するとし、「薬剤師が関わることで、地域で使用される医薬品の安定供給の観点からも有用な方策に一つとして考えられる」との見解を示した。