小野薬品 生成AI「OnoAIChat」導入で社員が業務効率向上を実感 目指すは生産性の世界トップ級
公開日時 2023/09/07 04:52
小野薬品は海外を含めたグループ全体で生成AI「OnoAIChat」を本格的に活用している。6月の導入開始から約2か月間で約6割の従業員が利用し、多くが業務効率の向上に実感を得たという。ただ、同社IT戦略企画部の中田大介部長(写真左)は、生成AIの導入によって目指すのは効率性だけではなく、生産性の向上だと力を込める。「日本人は生産性が低いと言われるが、グローバルで戦っていくうえで、生産性を世界でもトップクラスにまで向上させる必要がある。生成AIの導入はその一助となる」。曖昧なアイデアを明確なプランに昇華させるアイデアの壁打ちの相手をAIに担わせることなどを通じ、よりイノベイティブな企画や提案が生まれると期待する。
◎社員アンケート 6割以上の社員が利用 「OnoAIを利用すると仕事の効率が向上する」に7割が回答
同社によると、全面導入から約60日間で全社員の6割以上に当たる2384人が利用した。同社が全社員に行ったアンケート(回答1610人、回答率45%)では、「OnoAIを利用すると仕事の効率が向上すると思うか」との問いに、69%の回答者が「上がると思う」と回答。「大幅に上がると思う」は16%、「変わらない」は14%だった。
全面導入60日間におけるチャット回数は、約6万2000件。ログデータを分析したところ、検索・質問の用途が最多、次いで翻訳、要約・校正に用いられていることがわかった。コードの生成も一定数見られたという。
◎MRの利用は文献の翻訳・要約、メール文面案の作成・校正、業務報告など文章構成
このうちMRでは、文献の翻訳・要約、メール文面案の作成・校正、業務報告などの文章の構成、医療従事者への資材活用の壁打ち、医療従事者のインサイト探索などに同AIが活用されていた。数は少ないがロールプレイングに使用しているケースも見られた。
同部ユーザーエクスペリエンス課の田中誠次朗課長(写真右)は、「着実に利用状況は右肩上がりに増えており、定着したと言える日は早そうだ」と話す。ただ現段階は、まだ生成AIの導入のファーストステージに過ぎない。社内データや既存システムとの連携を視野に入れた次のステージを目指している。
例えば社内用のコールセンターにかかってくる様々な業務問い合わせ。過去のやり取りや社内データを同AIに取り込んで、問い合わせに対応するチャットボットを作成できないかという構想がある。また医師に案内した営業資材やウェブセミナーなどのコンテンツに含まれているキーワードを、生成AIに紐づけさせることで、医師のニーズを分析し、的確な情報提供活動を実現しようという案も出ている。
いずれの取り組みも実現可能性を探る段階だが、9月中旬頃に結果が出る見通しだ。このほかにも社内では多くのアイデアが生まれており、なかには、会議にAIを加えてみるのはどうかという提案もあった。議事録や内容の要約はもちろん、会議の途中にAIの意見も聞いてみることで、異なる視点やアイデアを取り込むことができると考えている。田中課長は、「AIに仕事をさせ、時間が浮いたから人を減らそうではなく、浮いた時間で、より質の高い企画・提案ができる」と期待を寄せている。