アステラス製薬 「価値」主導型ライフサイエンス・イノベーターへの変革 患者へのアクセス改善に注力
公開日時 2023/03/13 04:52
アステラス製薬の飯野伸吾サステナビリティ部門長は3月10日、報道各社のグループ取材に応じ、同社のサステナビリティ方針を解説した。社会的重要性を踏まえて同社は9つの最重要課題(マテリアリティ)を設定しており、その筆頭に「保健医療へのアクセス」を掲げている。飯野部門長は、「コアビジネス(Rx、Rx+)を軸に、患者への製品アクセスを向上し、外部パートナー等と協働でヘルスケアサービスへのアクセス改善に注力する」と強調した。また、「革新的な治療手段を、持続的に創出するためには、イノベーションに対する適切な価格設定が必要」と述べ、価値が適切に反映される価格設定の仕組みづくりを重要課題の一つにあげた。
同社は、サステナビリティ向上のための2つの柱として、①最先端の「価値」主導型ライフサイエンス・イノベーターへの変革、②社会の期待に応える強靭で持続可能な事業活動の強化-を掲げている。飯野部門長は、「アンメッドメディカルニーズに対して、細胞医療、遺伝子治療などの新しいモダリティを活用した革新的なヘルスケアソリューションを創出し、その価値を患者さん広く行き渡るよう努め続けるということ。これを目指すことが企業価値向上につながれば社会への貢献につながっていく」と語り、サステナビリティ向上に取り組む意義を指摘した。
また、「革新的な治療手段を、持続的に創出するためには、イノベーションに対する適切な価格設定が必要だ。こういった医薬品など医療ソリューションの提供によって、患者さんやその家族、患者さんの健康を支える医療従事者を含めた社会に与える影響について、適切に価格に反映されるための環境の仕組み作りにも取り組みたい。そんなことを計画している」と明かした。
◎保健医療へのアクセス ペルー、インド、中国、マレーシアで4つのプログラムを実施
同社は、「社会にとっての重要性」と「アステラスにとっての重要性」の2軸から、9つの最重要課題(マテリアリティ)を特定している。その筆頭にある「保健医療へのアクセス」では、2025年度までのコミットメントを公開しており、コアビジネスや同社製品へのアクセシビリティを向上させるほか、外部パートナー等と協働して疾病の認識、予防、ヘルスケアサービスへのアクセスを改善することで3600万人以上(累計)にインパクトをもたらすとしている。
飯野部門長は、「いまは特にオンコロジーに注力するNGO、 NPOを選定し、そこで困っている国や地域の方々にどんなサポートをしているかを確認しながら、その支援を通じて、その地域の医療システムの改善に貢献するというコンセプトで進めている」と説明。「2022年度はペルー、インド、中国、マレーシアで4つの新しいプログラムを走らせた」と明かした。具体的には、4団体に対し、がん治療、眼科医療、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)に特化した寄付を実施したというもの。4つのプログラムはともに、保健医療システム強化および健康に対する知識・理解の向上に寄与すると期待している。
このほか、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)から研究助成金を交付されたことで、同社は住血吸虫症に感染した乳幼児を含む、低年齢層の児童向けにプラジカンテル小児用製剤の臨床開発プログラムにも協力している。飯野部門長は、「アステラスの製剤技術を使って子供でも飲みやすい錠剤を開発した」と説明。欧州で承認申請したことを明かしたうえで、「承認した暁にはアフリカなど住血吸虫症の感染が蔓延しているような国に対して薬剤届けることができる。我々としては、単独のプログラムもあるが、こうした共同のエコシステムの中でやっていくという活動にも積極的に参加しているところだ」と強調した。