【World Topics】レイオフ相次ぐ消費者向けDNA検査企業
公開日時 2020/02/21 04:50
消費者向けDNA検査で30年以上の実績があり、2012年にスタートした家族史部門(Family History Business)で人気を博して業界のリーダーとなり、家庭用検査キットの売り上げで全米トップを争うAncestryDNA社が、2月5日、全従業員の6%をレイオフすると発表した。
同社によれば「消費者向けDNA検査への需要が、業界全体で頭打ちの転換点を迎えており、(同社も)直近18ヶ月間売り上げが低迷を続けている」として、「拡大路線できた経営方針を見直し(改めて家族史部門を中心に)事業の選択と集中による経営改善をはかる」(同社CEO, Margo Georgiadis)という。
https://blogs.ancestry.com/ancestry/2020/02/05/our-path-forward/
消費者向けDNA検査業界のレイオフは、1月末に、やはり業績低迷を理由に従業員の12%(100人)のレイオフを発表した23andMe社についで2社目である。
相次ぐレイオフのニュースで懸念が高まっているのが、DNA検査業界各社が保有している個人情報のセキュリティについてである。DNA検査が消費者の間で人気が高まるに伴って、当然ながら、また一方では皮肉なことに、データ・セキュリティへの懸念も同時に高まってきている。
AncestryDNA社は2020年1月末に公開した同社の“2019 Transparency Report”の中で「2019年内にペンシルバニア州の警察から同州の裁判所が発行した捜査令状に基づく犯罪捜査のためのデータ開示要請を受け取ったが、同社の基本方針によりデータの開示を拒否した」事実を公開している。
犯罪捜査にDNA検査が欠かせないことはすでに一般常識であり、捜査機関はいずれもDNA検査データベースへのアクセスを希望している。ちなみにPew Research Centerの調査によれば、消費者の2人に1人は「犯罪捜査のためなら個人情報を公開してもよい」と考えている。
https://www.pewresearch.org/fact-tank/2020/02/04/about-half-of-americans-are-ok-with-dna-testing-companies-sharing-user-data-with-law-enforcement/?mc_cid=554efe7ed1&mc_eid=d6489401db
しかし、米国国防総省は2019年12月20日付けで、米国軍人に対する防衛事務次官の署名入り覚書を出し、「(軍人が)遺伝子情報を第三機関に開示することは、単に個人情報に関わるリスクが懸念されるというだけでなく、国家安全保障上のリスクでもある」として、消費者向けDNA検査を受けないようにと警告している。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
https://www.scribd.com/document/440727436/DOD-memo-on-DNA-testing#from_embed