18年度診療報酬改定 入院・外来、医療ICTなど主要改定項目の算定要件明らかに
公開日時 2018/01/25 03:53
厚生労働省保険局医療課は1月24日の中医協総会に、個別改定項目ごとの考え方を提示した。このうち入院医療は、一般病棟入院基本料を「急性期一般入院基本料」と「地域一般入院基本料」の2区分に再編・統合。看護職員配置13対1、15対1の区分は地域一般入院基本料を算定する。このほか入院医療では診療実績の評価が導入される。地域包括ケア病棟入院料・管理料では、自宅等からの緊急入院の受入れ実績や在宅医療の提供実績を評価。回復期リハ病棟入院料は、前回改定に引き続きリハビリテーションの実績を評価する。これら報酬体系の見直しは、地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進を目的としている。急性期医療の姿が明確になり、地域・エリア単位で病院の集約化が進むと想定される。
◎入院医療 診療実績評価の要件明らかに
新たな入院医療体系では、「急性期医療」、「急性期医療~長期療養」、「長期療養」の3つに大別した。これにあわせて診療報酬点数も、急性期医療を担う“急性期一般入院基本料”、急性期医療~長期療養を担う“地域一般入院基本料”、回復期リハビリテーション病棟入院料、地域包括ケア病棟入院基本料、長期療養を担う療養病棟入院料と明確になる。
入院医療の評価手法については、「基本部分の評価要件」と「実績に応じた段階的評価要件」のそれぞれを導入する。基本部分の看護配置基準については、急性期一般入院基本料は10対1、地域一般入院基本料は15対1、長期療養は20対1と、それぞれ提供するサービスに応じた医療資源投入量を明確にした。
さらに、診療実績の評価要件では、回復期リハ病棟ではリハビリの実績指数、地域包括ケア病棟では、自宅などからの緊急入院の受け入れや在宅医療、介護サービスの提供や実績などを踏まえた評価とする。それぞれの病床機能を診療報酬上の点数でも明確化した。
これまで、診療報酬点数が高い7対1入院基本料を取得するメリットは医療機関側にも大きく、“7対1シフト”と言われるほど、急性期過剰な状況にあった。新たな点数では、現行の7対1と10対1の間の中間的な評価として、2つの入院料を新設する。ただし、この2つの点数については診療実績データによる判定を要件とすることとなる。つまり、実診療下での、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合(重症患者割合)で、該当する点数が決まることになる。そのため今後は、現行の7対1に相当する最も高い点数を取得できる重症患者割合を何%とするかが焦点となる。診療側は入院医療の点数が抜本的に見直される中で現行の25%維持を求めているのに対し、支払側は30%への引上げを求めており、今後詳細が詰められることとなる。
◎かかりつけ医 地域包括診療料・加算の要件緩和 「初診料 機能強化加算」を新設
地域包括ケアシステムの中核を担う「かかりつけ医」については、地域包括診療料の見直しなど手厚い評価を行った。地域包括診療料・加算の取得要件については、これまでの常勤医師2人から「常勤医師1人+非常勤医師1人」へと、医師の組み合わせでも良いこととする。地域包括診療加算取得のネックと指摘されていた24時間対応については、「24時間の往診等の体制を確保していること」と緩和された。また、外来医療中心の医療機関であっても、在宅医療の提供実績についても評価を充実するとした。
このほか、患者の受診医療機関や処方されている医薬品の把握について、医師の指示を受けた看護師などが実施可能であることを明確化する。さらに、一定の受診歴を有する患者について、同意に係る手続きを簡略化することなども盛り込んだ。
かかりつけ医機能を有する医療機関において、専門医療機関への受診の要否の判断などを含めた初診時の診療機能を評価するため、「初診料 機能強化加算」を新設する。算定要件としては、地域包括診療加算、地域包括診療料、認知症地域包括診療加算、認知症地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料を届け出た保険医療機関(診療所または200床未満の保険医療機関に限る)において、初診を行った際に加算する。
◎かかりつけ医の評価、生活習慣病の重症化予防で要件新設
かかりつけ医の評価として、生活習慣病重症化予防の推進に係る要件を見直す。生活習慣病管理料について、療養計画書の記載項目(様式)に、血圧の目標値および特定健康診査・特定保健指導を実施する保険者からの依頼に応じ、情報提供を行うこと等に関する記載欄を追加する。
具体的には、糖尿病又は高血圧症の患者については、治療効果が十分でない等のため、生活習慣に関する管理方針の変更、薬物療法の導入、投薬内容の変更等、管理方針を変更した場合に、その理由及び内容等を診療録に記載し、当該患者数を定期的に記録していること。さらに、学会等の診療ガイドライン等や診療データベース等の診療支援情報を、必要に応じて、参考にすることなどが新設項目として明記された。
◎医療ICT 遠隔診療の充実で「オンライン診療料」を新設
医療ICT関係では、「オンライン診療料」、「オンライン医学管理料」が新設される。情報通信機器を活用した診療を評価するもの。対面診療を原則とながらも、有効性や安全性等への配慮を含む一定の要件を満たすことを前提に診療報酬で評価する。オンライン診療料の算定要件は、初診以外の患者に限定。患者の同意を得たうえで、対面診療とオンライン診療を組み合わせた療養計画を作成する。その上で、計画に基づく診療を行い、その内容を診療録に添付していることをあげた。なお、算定に当たっては、当該医療機関に設置された情報通信機器を用いて診療を行う。さらにオンライン診察する医師は、対面診療を行う医師と同一であることも要件に加えている。
電話等再診も要件を見直す。患者等から電話などによって治療上の意見を求められて指示した場合に算定が可能であるとの取り扱いを明確化する。このほかデジタル病理画像を用いた病理診断について、その精度を担保しつつ、デジタル病理画像のみを用いて行う場合や、医療機関間の連携により受取側の医療機関において標本作成を行う場合にも病理診断料の算定を可能にした。
◎離れた医療機関や医療従事者間の情報共有・カンファレンスにICT活用
そのほかICTを活用した勤務場所に関する規定の緩和として、画像診断、画像診断管理加算、病死診断料、病理診断管理加算について、保健医療機関において週24時間以上勤務する医師がICTを活用して勤務時間外の時間に自宅等で読影した場合も、院内での読影に準じて算定できるとした。さらにICTを活用した医療機関連携では、離れた医療機関の医療者の情報共有や連携を促進する観点から、感染防止対策加算や退院時共同指導料について、連携会議や情報共有等にICTを活用することができるように要件を緩和する。これら評価の充実により、地域医療連携推進ネットワークの構築などに弾みがつく可能性が高い。