厚科審・臨床研究部会 特定臨床研究のCOI管理を省令化へ 財団経由の資金提供も臨床研究法対象に
公開日時 2017/09/01 03:51
厚生労働省医政局研究開発振興課は8月31日、厚生科学審議会臨床研究部会(楠岡英雄部会長)に、臨床研究法の対象となる“特定臨床研究”における利益相反(COI)について研究責任者が属す所属医療機関の確認を経て、認定臨床審査委員会が審査を行う一連の流れを省令化することを提案した。所属医療機関には事実関係の確認後、必要に応じて、研究責任者に利益相反の管理方法の助言・勧告することも求める。COIについても、臨床研究に携わる医師、実施医療機関の責任が明確化されることになる。資金提供の流れについては、製薬企業から直接提供された場合だけでなく、自社製品の臨床研究に当てるために財団に提供した場合も特定臨床研究に含むことが盛り込まれた。
COIを確認に際しての流れは、▽研究責任者が「利益相反管理計画」を作成し、所属機関に提出、▽所属機関のCOI委員会などで、製薬企業からの資金提供の状況などについて事実確認を行う。この内容を踏まえ、研究研究の実施体制なども含んだ助言・勧告を行い、「利益相反管理報告書」を作成。これを研究責任者にフィードバック▽研究責任者はフィードバックされた、利益相反管理報告書を受け取り、必要に応じて対応案を作成、▽研究責任者から最終的にまとめた利益相反管理計画の報告を受け、認定臨床研究審査委員会が審査――とした。利益相反管理計画など文書の様式については、通知の発出などで統一化を図る考えで、研究に携わる医療機関や医師側の負担軽減にも寄与することを見込む。
所属機関からの助言・勧告について、厚労省医政局研究開発振興課の森光敬子課長は、「執筆料などを見た上でかかわらないほうがいいのではないか、データ解析は別の人にお願いしたほうがいいのではないか、とアドバイスしている医療機関もある」と現状を説明した。
臨床研究法施行に伴い、高血圧や糖尿病など生活習慣病領域を中心に診療所で多くの臨床研究が実施されている中で、COI委員会を持たないことの多い診療所でも対応も迫られることになる。そのため、所属機関には機密情報の多い事実関係の確認を必須事項として求める一方で、最終的な判断は認定臨床研究審査委員会が担うこととした。
◎奨学寄附金ベースでの臨床研究は法違反に
臨床研究法の範囲である「特定臨床研究」には、製薬企業などから研究資金の提供を受けたものが含まれる。その解釈について、製薬企業など医薬品等製造販売業者とその子会社、と明確化した。ただ、製薬企業から直接資金提供を行う以外に、財団などとの契約に基づき、自社製品の臨床研究に当てるための資金を提供した場合も含むこととした。
研究資金の内容については、特定臨床研究の実施にかかわる人件費、実施医療機関の賃貸料、そのほか臨床研究の実施に必要な費用に充てられることが確実であると認められる資金とした。労務提供や物品提供のみの場合は、研究資金の提供に当たらないこととなる。森光課長は、「管理する対象として、資金提供だけにするということ」と述べ、労務提供や物品提供については、利益相反として認定臨床審査委員会が審査する必要があるとの考えを示した。
なお、降圧薬・ディオバンの臨床研究不正では、奨学寄附金の扱いが問題視されたが、臨床研究法第32条では、製薬企業などが資金提供を行う際の締結を求めており、奨学寄附金ベースでの特定臨床研究は行えないこととなる。逆に奨学寄附金ベースの特定臨床研究については、32条違反となる。財団でも契約ベースで資金提供が流れているか確認することとなる。
◎認定臨床研究審査委員会 審査対象の専門家の参加を求める
このほか、認定臨床研究審査委員会の設置要件などもこの日の臨床研究部会で示された。ディオバン事件では、倫理審査委員会(IRB)が歯止めとならなかったことから、機能を強化することが求められている。認定臨床研究審査委員会には、特に倫理的・科学的観点から審査を行うことと、中立的かつ効率的な審査を求めた。委員は、▽医学・医療の専門家、▽生命倫理に関する識見を有するもの又は法律に関する専門家、▽一般の立場の者—とし、男女両性、5名以上で構成することとした。また、技術専門委員として、審査対象となる研究領域の専門家を複数人、生物統計家の参加を必須とし、未承認やリスクを高める適応外使用の場合には、さらに臨床薬理学の専門家を加えることも求めた。
利益相反の観点から、委員に非専門医を加える必要性を指摘する声もあがったが、森光課長は、ディオバン事件を引き合いに、「なぜこの研究をやらなければならいのかという議論は、専門家でないとわからないというまま進んでしまった」との反省があると述べ、その領域の専門家を加えることへの理解を求めた。