「ヘルスケア産業プラットフォーム」設立へ UAゼンセンとJEC連合
公開日時 2019/04/08 03:51
UAゼンセンとJEC連合は4月23日、両団体の医薬化粧品部会が参画する「医薬・医療機器・医薬品卸・OTC・化粧品関連労働組合政策推進共同協議会(ヘルスケア産業プラットフォーム)」を設立する。両団体が5日、会見を開いて明らかにした。プラットフォームには、UAゼンセンから44組織4.1万人、JEC連合から26組織2.8万人が参画する。UAゼンセンの木暮弘書記長(マイカルユニオン 現:イオンリテールワーカーズユニオン)は、「(これにより)業種を同じくする労組が、全体でまとまって機能的に活動できる」と意気込んだ。JEC連合の吉田直浩事務局長(日本化薬労働組合)も「働く者の幸せに一歩でも近づけるように膝を付き合わせて取り組んでいく」と強調した。
プラットフォームは、業界が直面する課題を共有し、解決に向けて活動できる体制を構築するのが狙い。連合や政党と連携を深めながら、政策立案や、提言、要請などの活動を行っていく。運営は、UAゼンセンとJEC連合が共同で実施。政策チームを設置して、業界が直面する課題を見出す。そのうえで活動内容の検討については、双方の代表者で組織する幹事会が行う。運営費用については、構成組織からの拠出金で賄う。
◎UA・南澤副会長「産業の枠組みを超え、横串で議論をしていく」
新たな団体の設立ではなく、それぞれの組織が寄り合う“プラットフォーム”とした理由について、UAゼンセンの南澤宏樹副会長(帝人労働組合)は、「産業の枠組みを超え、横串で議論をしていく新しい形が必要だと考えた結果だ」と意義を強調した。大企業だけでなく、中小企業や地方の声を反映しやすくする狙いもある。
プラットフォームの設立をめぐっては、UAゼンセンから一部の労組が脱退し、独自の新組織、医薬化粧品産業労働組合連合会(薬粧連合)を設立した経緯がある。UAゼンセンでは薬粧連合に参加した労組に対し、プラットフォームへの参加を促したが、参加には至っていない。南澤副会長は、「戻ってくることを粘り強く問い続けたい」と述べた。このため、薬粧連合に参加した労組がUAゼンセンに提出した脱退届は、いずれも受理せず留保を続けているという。
一方薬粧連合によると、18年夏以降、UAゼンセンからの脱退を訴えた労組では、UAゼンセンに出向していた組合員の出向契約が解消となったほか、UAゼンセンの活動に参加しないよう通知されるなど、交流は途絶えている。
◎プラットフォームと薬粧連合 双方の行方は? 労働環境は日々深刻化
医薬化粧品関連産業の労働組合をめぐっては、複数の組織に分散するかたちが続いており、統合を長年の悲願としていた。2011年には「統合準備委員会」が立ち上がり、UAゼンセンとJEC連合のほか、フード連合も参加。将来的な医薬品関連産業労組の産別の立ち上げを目指し、話し合いを重ねていた。だが意見はまとまらず、統合準備委員会は18年夏に解散した。
その後18年10月、UAゼンセンに所属していた一部の大手製薬会社の労組が薬粧連合を設立。UAゼンセンでは、「(薬粧連合)の発足は、かえって医薬品関連労組の分断を助長することとなる」と批判を強めていた。
UAゼンセン脱退した理由について、薬粧連合の浅野剛志会長(第一三共グループ労働組合連合会)は本誌取材に対し、「雇用に関する施策などに、業界全体でまとまって対応していく必要があるため」と説明している。繊維や化学、流通やサービスなど幅広い企業の労組が加盟するUAゼンセンでは、「医薬品業界だけの意見を押し通すのは難しい面があった」からだ。他産業が賃上げなど労働条件の向上を訴えているのに対し、医薬品業界では、早期退職の勧奨や事業譲渡が相次ぎ、雇用問題に対する考え方に温度差があった。
2019年に入ってからも、興和労働組合、KMバイオロジクス労働組合、ユーロフィンASL労働組合の3組織が薬粧連合に合流している。うち2組織の出身産別はUAゼンセンだ。薬粧連合の組合員数は現時点で、3万人に迫る勢いだ。
早期退職の勧奨や、事業譲渡が相次ぐなか、組合員の雇用の安定を訴える労働組合は、大きな存在意義をもつ。プラットフォーム側と薬粧連合側では、組織の成り立ちや形態に違いはあるが、産業全体をめぐる環境が刻々と変化するなかで、課題解決に向けて活動するという狙いは共通している。それにもかかわらず、溝が埋まらないまま時間だけが経過するのは、双方にとって活動の足かせになりかねない。歩み寄るのか、平行線をたどるのか。双方の今後に注目したい。(岡山友美)