横倉日医会長 未来投資会議の予防・健康インセンティブは「社会保障費以外の財源で」
公開日時 2019/03/28 03:50
日本医師会の横倉義武会長は3月27日の記者会見で、政府の未来投資会議が議論している予防・健康づくりの方向性について、「健康寿命の延伸によって高齢者が生きがいを持って働き続ける社会づくりこそ、医師や医師会の役割だ」と述べ、かかりつけ医が積極的に関わる意義を強調した。一方で、予算措置が求められる「保険者努力支援制度」や「介護インセンティブ交付金」(保険者機能強化推進交付金)については、社会保障費を圧縮して財源を捻出することに抵抗感を示し、「(必要財源は)別に確保し、市町村などが行う健康づくりの取り組みに充てて欲しい」と、早くも財政当局を牽制した。
3月20日の未来投資会議では、日本経済再生総合事務局から「全世代型社会保障における疾病・介護の予防・健康インセンティブに関するインセンティブ」と題する参考資料が提出された。それによると、個人のQOL向上や健康寿命の延長には多面的な意義があるとして、疾病予防や健康づくりの必要性が示されている。具体的には、▽保険者の予防・健康づくり等への取組状況について評価を加え、保険者に交付金を交付する「保険者努力支援制度」、▽保険者や都道府県の介護予防への取り組み状況について評価し、保険者や都道府県に交付金を交付する「介護インセンティブ交付金」の強化-などがあげられている。
◎日医、県医、自治体との連携協定で横展開も
横倉会長は会見で、「(健康づくりの)取り組みが、結果として病気や重症化の予防につながり、医療費の伸びの抑制につながる可能性は非常にある」と強調した。昨年9月には日医、埼玉県医師会、埼玉県が「かかりつけ医の糖尿病診療の推進と重症化予防に向けた連携協定」を締結。3者が連携して糖尿病の重症化予防に取り組み、健康寿命の延伸を目指しているとした。横倉会長は、今後もこうした取り組みを横展開し、効果的な重症化予防を推進し、国民の健康寿命の延伸につなげたいとした。
そのほか横倉会長は、日本健康会議として日本商工会議所を始めとする経済界、医療関係団体、健保連を始めとする保険者、自治体とも取り組みを進めていることを明らかにした。すでに、宮城、静岡、大分、高知、福岡、福井の6県は「地域版日本健康会議」が立ち上がっている。横倉会長は、「他の県でも経済界、医療関係団体などと連携して進めるようにお願いしている」と述べた。
◎6月の閣議決定、年末の予算編成を注視
一方で予防・健康づくりに必要な財源については、「公的医療保険に必要な財源はしっかり確保して頂き、保険者のインセンティブを上げる財源は別途確保して欲しい。結果としてこういう取り組みが病気の予防や重症化予防につながる。医療費の伸びの抑制につながる可能性は非常にある。そういうことを(政府側に)主張していきたい」と強調し、6月に閣議決定される「未来投資戦略2019」や2020年度予算編成に向けて動向を注視するとした。
◎日本の医療のグランドデザイン2030を作成
同日の会見では、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が、2030年を見据えた医療のあり方などを示した「日本の医療のグランドデザイン2030」を公表した。第1部は「あるべき医療の姿」、第2部は「日本の医療 現状と検証」-について項目ごとにメッセージが掲載されている。この日公開されたのは、2部構成まで。今後は「第3部」として、医療のあるべき姿を実現するための提言と行動計画については、順次公表していく考え。
日医総研の横倉所長は、「2030年の変化を予測し、対応を考え続けることは重要だ」と述べた。