アレクシオン aHUS治療薬・ソリリスで二次性TMAに「使用経験なし」認め添付文書改訂
公開日時 2019/02/12 03:53
アレクシオンファーマは2月8日、ソリリスの適応のひとつである非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)について、二次性TMAの使用経験がないことなどを明記する添付文書改訂を行った。厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知に従ったもの。同社は二次性TMAも適応だと医師を誤認させる資材をMR(同社はMCCと呼称)を通じてプロモーション活動を行っていた。今回の添付文書の改定では、二次性TMAがソリリスの適応外であることを明確化するため、「二次性血栓性微小血管症の患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない(使用経験がない)」ことを添付文書に明記した。
新たな添付文書では、「補体制御異常による非典型溶血性尿毒症症候群の患者」に使用することとされた。日本腎臓学会・日本小児学会が策定した「aHUS診療ガイド2015」を参考とすることも明記された。この理由について、「aHUSの対象範囲を明確にすべく“補体制御異常による”aHUS の患者のみに使用するよう明記することとした」としている。
さらに、二次性TMAについては、「aHUS診療ガイド2015ではaHUSから除外されており、二次性TMAの患者に対する臨床試験データもない」として、使用経験がないことを明記するに至った。
◎「診断基準等を参考に」の「等」の記載を削除
本誌がこの問題を報じたのは2018年9月(関連記事)。同社は、海外論文を基にaHUS診療ガイドとは異なる「鑑別診断の流れ」を図示した独自のプロモーション資材を作成。この論文を社内では“ローレンス論文”と呼び、「最新の情報」として、医療現場にこうした情報を提供してきた。資材には、「上記記載にあるaHUSの定義は本邦と異なるため、国内のaHUS診療ガイド2015等を参照してください」と記載されていた。このため今回の添付文書の改訂で、現行記載の「診断基準等を参考に」の「等」の記載が曖昧なことにより削除された。
なお、当初の資材には、患者数の比較的多い「二次性TMA」の記載がなく、二次性TMAもソリリスの適応と医師の誤認をまねくリスクがあった。原著となる海外論文には、「本論文にはAlexion Pharmaceuticals,Inc.の財政的支援を受けている。本論文は著者らの意見および見解を反映したものであり、Alexionより最小限の編集サポートを得て作成した。著者は全員Alexionより謝礼を受け取っている」(日本語版より)と記されていた。さらに、100万人に2~5人といわれるaHUSに、同社は前年比180%の売上目標を課し、MRに獲得症例ごとの報奨金も支給していた。
当初、同社のメディカル本部の幹部らは本誌取材に対し、「二次性TMAのなかにはaHUSがいる可能性があるので、医師に対してそれを訴求する」とコメントしていた。加えて、「弊社は日本製薬工業協会(製薬協)には加盟していないため、プロモーション・コードに従う必要はない」、「正確に早く鑑別診断がなされて適切な治療介入できることをサポートできるような情報提供活動が会社の使命だ」などと、プロモーション活動の正当性を主張していた。
この問題を受け、9月28日に開かれた厚生労働省の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で森和彦大臣官房審議官(医薬担当)は、「適応の選択について、現場に対する情報提供のあり方に問題があるという指摘は重く受け止めている」とし、情報提供資材を含めて早急に調査し、「その上で是正すべきものがあれば厳しく指導する」と発言。10月には、厚労省医薬・生活衛生局が不適切な資材を回収するよう、指示していた。
◎当分の間は、「添付文書改訂のお知らせ」で周知
なお、同社は、流通在庫の関係から最新添付文書(第11版)を封入した製品が届くまでにかなりの日数を要するとし、当分の間は、「添付文書改訂のお知らせ」で周知する方針だ。