ノーベルの先駆け品目・チタンブリッジ 永続的なQOL改善に期待
公開日時 2019/01/23 03:50
名古屋市立大学大学院医学研究科耳鼻咽喉頭頚部外科の讃岐徹治講師は1月22日、ノーベルファーマ主催のメディアセミナーで、原因不明の難治性疾患「内転型けいれん性発声障害」の手術法「甲状軟骨形成術2型」について、「永続的なQOLの改善が得られるのではないか」と意義を強調した。同手術に用いる「チタンブリッジ」は、16年2月に医療機器として初めて、国の先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、17年12月に薬事承認を取得。18年7月に発売されている。
内転型けいれん性発声障害は、自分の意識とは関係なく声帯が収縮することで、声の途切れや震え、絞り出すような発声などの症状が現れる疾患。一般的な治療はボツリヌス毒素の注射だが、数か月で効果が切れるのが課題とされていた。同手術は、発声時に声帯が閉まらないよう咽頭の軟骨を縦に切開し、声帯と軟骨の付着部を軟骨ごと外側に広げ、チタンブリッジで固定する。
臨床試験では、21例を対象に、「私の声は人に聞き取りにくいと思う」などの質問から障害の自覚症状をスコア化した「VHI」について、術前と術後13週の差を検討した。調整平均の差は18.9となり、改善が認められたという。ボツツリヌス毒素の注射の値は9.6で、讃岐講師は、「有意差をもって上回ったことが確認できた」と評価した。
一方、有害事象は19例41件で認められた。最も多く観察されたのは、処置による疼痛で17例あった。讃岐講師は、「いずれの症例も軽症で、術後一過性にみられ数日以内に消失した。機器に関連する有害事象はなかった」と述べ、「機器・手技ともに安全だと明らかになった」と強調した。
◎横浜市大 折舘主任教授「効果ある患者を見極める研究を」
同セミナーで講演した横浜市立大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科の折舘伸彦主任教授は、「声が途切れる患者には非常に効果がみられる一方、震えが出ている患者には即効的な効果は認めがたい」と指摘。「どのような患者でメリットが得られるのか、今後さらに研究されていかないといけない状況だ」と述べた。
<訂正>下線部の表記に誤りがありました。訂正いたします。(1月23日17時30分)