武田薬品とエーザイ 化合物ライブラリー提供で新規抗菌薬開発目指す AMR対策でGARDPと
公開日時 2018/12/13 03:51
AMR対策の必要性が高まるなかで、武田薬品とエーザイが提供する化合物ライブラリーを、非営利研究開発組織“Global Antibiotic Research and Development Partnership (グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ、本部:スイス・ジュネーブ、以下GARDP)がスクリーニングを実施するパートナーシップを契約したと12月12日、発表した。GARDPによると、複数の製薬企業と合意に至ったのは初めてという。AMR対策がグローバル全体の課題となるなかで、新規抗菌薬の対策・開発を加速させる狙いがある。
AMRをめぐっては、抗菌剤のマーケットからは採算性が取れないことなどから、市場からの製薬企業の撤退が相次ぎ、新薬開発が進まない現状がある。一方で、AMRは年間約70万人の死亡者がいるとの推計もある。新規抗菌薬がなければ、AMRがパンデミックへとつながる可能性もある。WHOでも世界的な公衆衛生上の優先課題に指定されるなど、世界的な課題と言える。G7サミットで採択された伊勢志摩首脳宣言にAMR対策も明記され、日本国内での対策も進められている。
今回の契約では、武田薬品とエーザイ、2社の化合物ライブラリーから、GARDPが公金活性スクリーニングを実施。韓国のInstitut Pasteur Korea が抗菌活性試験を実施する。グローバルな企業の有する技術とリソースを活用することで、早期にヒット化合物の特定につなげ、最終的には新規抗菌薬を創出したい考えだ。
GARDPは、WHOとDrugs for Neglected Disease initiative(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ:DNDi)が設立。WHOは、AMRについてのグローバルアクションプランで、新規抗菌薬・診断法の研究開発の加速に向けて官民パートナーシップの必要性を訴えている。GARDPは、早期の探索段階から前臨床、臨床、新薬を届けるまで、抗菌薬開発におけるすべてのプロセスを実行できるのが特徴。パートナーシップを活用してもらうことで、グローバルヘルスへの貢献を目指す製薬企業にとって、抗菌薬の研究開発に携わることも後押ししたい考えだ。
武田薬品のCeri Daviesニューロサイエンス創薬ユニット長は、「創造的なパートナーシップに貢献し、生命を脅かす薬剤耐性を治療する新規医薬品の研究開発の促進に関われることを嬉しく思う」とコメント。エーザイの塚原 克平上席執行役員hhcデータクリエーションセンター長 ・筑波研究所長は、「発見された種から新しい薬が生み出され、耐性菌により命を落とすことのない世界が実現することを願っている」とコメントを寄せている。