エーザイ・内藤CEO 肝臓病などに新薬・長期品・GEでベストな治療提案、日医工との戦略提携で可能に
公開日時 2018/03/30 03:51
エーザイの内藤晴夫CEOと日医工の田村友一社長は3月29日、前日に発表したジェネリック(GE)事業の戦略提携に関して都内で共同会見した。内藤CEOは、「ジェネリックを単品で考える時代は終わった。オーソライズドジェネリックも単品ではもはや成立しない。領域ごとにどれだけ品揃えができるかだ」と指摘。豊富な品揃えが、GE事業のためにも、また注力領域での患者の様々なニーズに解決策を提案・提供するエーザイ独自のビジネスモデル「領域エコシステム」の推進のためにも必須と判断し、今回の提携に至ったと説明した。
戦略提携の柱は大きく3つで、▽19年4月にエーザイ傘下でGE事業を展開するエルメッド・エーザイを日医工に総額170億円で譲渡(=GE事業の統合)▽日医工製品についてエーザイが共同販促するオプションを持ち、「領域エコシステム」を共同で推進▽エーザイインド工場の原薬の日医工製品での活用――となる(3月29日付けで既報)。
エルメッド売却に関して内藤CEOは、「ここはぜひ、誤解してもらいたくない」と強調した上で、「GE事業を悲観したり、制度上の諸々の困難が襲い掛かりそうだから手放すわけではない。むしろ全く逆で、GEの役割はこれから非常に拡大していくとの展望の中で今回の提携に踏み切った」と述べた。
「GE事業の将来は大変明るい」とも話し、注力領域のそれぞれの疾患に新薬、長期収載品、GEによるベストな組み合わせでの治療提案を可能にするための提携だとした。リアルワールドデータを含むビッグデータ分析により、エビデンスに基づくベストな組み合わせを提案するとしている。
■認知症、肝臓病、てんかん、リウマチの4領域でエコシステム推進
エーザイの「領域エコシステム」は、患者の「True Needs(真のニーズ)」を引き出し、薬剤のほかに診断、介護、生活支援、民間保険など患者が抱える様々な課題解決に異業種連携を含めてソリューションを提供するビジネスモデル。まずは認知症、肝臓病、てんかん、リウマチ――の4領域でエコシステムを推進する。
例えば肝炎・肝硬変・肝がん患者に対する薬物療法では、エーザイ本体は肝がん治療薬レンビマなど3製品、エルメッドは抗ウイルス化学療法剤エンテカビル「EE」の1製品、エーザイ傘下のEAファーマは栄養状態改善薬リーバクトなど4製品を提供できる一方、日医工は腹水治療、腹膜炎治療、皮膚掻痒症治療、脂質異常症治療などに20製品以上を提供できるという。
内藤CEOは、「我々がこれから推進する領域エコシステムでは、医薬品については日医工製品により非常に豊かなコンテンツを得ることになる」と述べた。
■田村社長 戦略提携で「他のGEメーカーと異なるアプローチ可能に」
田村社長は、今回の戦略提携は「原薬供給、領域エコシステム、ジェネリック統合の3つの柱から、ジェネリック医薬品事業の新しいビジネスモデルの創造に挑戦するもの」との認識を示した。そして、医療機関の収益悪化などを背景にGEを含む価格圧力が年々増しているとした上で、「提携により安価で良質な原料を調達できることは、我々の収益に大きく影響する」と提携意義を語った。
地域包括ケアによる地域完結型医療提供体制の整備が全国各地で進んでいることに触れながら、「新しい市場の形成時期に、日医工グループとして力不足を感じていた」とも話した。これは新たな医療提供体制に対して、GEでどのようなアプローチをしていくのが最適かの方針が定まっていないことを指すという。田村社長は、エーザイの「領域エコシステム」での協業を通じて最適アプローチを探る意向で、「他のGEメーカーとは異なるアプローチが可能になると考えている」と意欲を示した。
■日医工とエルメッドの重複は134品目 GE市場シェア50%以上に11品目
取扱品目数は日医工が1007品目、エルメッドが188品目で、重複は134品目ある。重複品目のうちGE市場内シェアが合わせて50%以上となるのが11品目、30%以上50%未満は18品目となる。
田村社長は重複品目について、「品目別に高い市場シェアをもつことは日医工グループにとって市場優位性が増す」と述べるとともに、18年度薬価制度抜本改革では要件を満たす長期収載品に市場撤退を認めるルールが導入されたことに触れながら、「(長期収載品の)市場撤退もあり得る状況の中で、新たなビジネスチャンスがあるとも考えている」と語った。重複品目の統合や生産体制はプロジェクトを立ち上げて19年4月までに行う意向も示した。
今回のGE事業の統合でGE市場シェアは15%を超え(日医工約12%、エルメッド約4%)、規模拡大による原薬、生産、流通などの面でのコストシナジーを見込んでいる。