エーザイ・内藤CEO 認知症ソリューションビジネス本格展開を表明 診断・治療・介護・生活支援・民間保険 異業種企業と連携
公開日時 2018/03/09 03:52
エーザイの内藤晴夫CEOは3月8日、東京都内で開催した定例の記者懇談会で、エーザイが蓄積してきた認知症関連データ、情報をベースに、薬剤開発だけでなく、認知症患者やその家族が直面する様々な課題に対するソリューションを異業種企業と連携しながら開発・提供するビジネスを本格展開すると表明した。現在、アルツハイマー病の新薬開発を進めており、その適正な使用をするにも、治療・介護、生活環境を整備が重要であり、そのためのソリューション開発が必要と判断した。
これは「エーザイADエコシステム」と称するビジネスモデル。薬剤のみならず、診断、治療、介護、生活支援、民間保険など課題解決に必要な領域全てを対象に、異業種企業がソリューションを開発する際、エーザイの持つ情報を利用し、その利用料等をエーザイが得るといった「プラットフォームビジネス」を描く。
エーザイは、認知症については治療薬だけでなく、その臨床試験・市販後試験データ、リアルワールドデータ、進行中の新薬開発の最新データのか、診断・治療効果スケールや医療連携支援、患者・家族向け情報サイト、自治体や医師会など全国130か所の認知症支援を目的として街づくりなどの連携協定などの取り組みを進めてきている。
そこで蓄積した知識、経験、事例といったナレッジを、一部は多職種連携支援ツールや、患者の見守り支援ツール、認知症診断一時金保険(民間保険)、服薬支援支援機器の開発に活かしてきた。本格化させると表明した新モデルでは、同社の認知症予防薬や根本治療薬の開発に加え、バイオマーカー開発、画像診断、予防としての食生活・運動プログラム開発、相談事業、介護施設のマッチング、治療・介護費の民間保険などのニーズに対し、異業種企業のアイデアを、エーザイのナレッジからなるプラットフォームを活かし、実用化に結びつけられるようにする。医療や介護の現場に役立つソリューションは、薬剤を含め提案の幅を広げることにつながると考えられる。
「GoogleやAmazonが手本」
内藤CEOは、「我々のプラットフォームを活用して、自分たち(異業種のソリューションプロバイダー等)のビジネスの精度や確度を上げる際に、そういう方々に利用料や、(患者や家族のニーズとの)マッチング費用をいただくような」仕組みを描いているとした。そのうえで「このヒントはGoogleやAmazonといったプラットフォームビジネスで成功を収め急成長、急拡大した企業を一つの手本としている」と説明し、期待感を示した。想定する事業規模は算出していないとした。
実施の狙いについては現在開発中のアルツハイマー病の新薬の上市をにらんだ環境整備も理由の一つにあるとし、「Aβイメージングはだれが行い、費用負担はどうするのか、(新たな薬剤)のファンディングはどうするのか。公的保険の枠組みをはみ出ることも大いに考えられる。その際は、保険産業がカバーし、比較的低価格で提供できたらいいのではないか。それらの開発にしてもエーザイの持つプラットフォームにあるアセットや情報が大いに魅力的ではないかと考えている」と述べた。
将来的には、公的医療保険制度においては「給付対象をいかなるものにするかは避けて通れない論点。その中で民間保険の活用をオプションとして考えなければならない」との見方を示した。その際は、患者負担が重くならないようにすることは重要な論点だとした。