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【解説】2018年度診療報酬改定 地域包括ケアで機能分化・強化に動き出す医療機関

公開日時 2018/02/08 03:53

「高度急性期、急性期、回復期、慢性期という4つのカテゴリーに収斂していく。人口構造が変化し、急性期病床は空床が出てくる。そうした中で、各医療機関が選択することであるべき姿に収斂する。それを後押しするのが今回の診療報酬改定だ」-。日本医師会の横倉義武会長は2月7日、中医協が2018年度診療報酬改定を加藤厚労相に答申したのを受け、日本医師会館で開いた会見でこう話した。18年度改定では、入院基本料を医療資源投入量と診療実績に応じた段階的な評価へと抜本的に見直した。これまで診療行為に応じた報酬体系であったこともあり、急性期病院は様々なメニューを揃えた総合デパート方式とも揶揄されてきた。18年度改定を皮切りに各医療機関が自らの強みを発揮し、それ以外の医療機関と連携する形へと動き出すことになる。地域包括ケアシステム構築へ向けて、入院医療は急性期病院の転換を皮切りに大きく動き出すこととなりそうだ。

◎新たな医療提供体制に歩みだす 「それに寄り添う診療報酬改定だ」横倉日医会長


「18年度は各都道府県で策定される地域医療構想が実行に移され、それに向けて新たな医療提供体制に歩みだす。今改定は、それに寄り添う診療報酬改定だ」-。横倉会長はこう語る。間近に迫った今年4月は、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定にとどまらず、第3次医療費適正化計画、第7次地域医療計画がスタートするタイミングでもある。

これまで政府が最も医療資源、そして医療保険財政を投入してきたのが看護配置7対1に代表される急性期病床だ。7対1入院基本料と10対1入院基本料との間には診療報酬上で300点の格差があった。10対1への転換は、看護師の雇用を含め、病院経営へのダメージも大きかった。一方で、人口構造が変化する中で、急性期病床はすでに稼働率が低下しているとの声も医療現場からはあがっている。今後はさらに高齢化に伴って、脳・心血管疾患の発症やその後のリハビリテーションや肺炎、骨折などの増加も見込まれる。こうした中で、18年度改定では、7対1と10対1の中間的な点数を新設した。点数の格差が縮まることで、医療機関の転換を促す。ここでひとつポイントとなるのが、新たな点数である入院料2、3を算定に際して、重症患者の割合の判定について診療実績データ(DPCデータ)を用いることを要件化したことだ。

地域医療構想の策定も相まって、自身の医療機関の実診療データをベンチマークすることで、医療機関自ら病床機能の転換について判断することを後押しする。この姿は、2025年度の改定に向けて、「過渡期」との見方を全日本病院協会の猪口雄二会長は示す。

厚労省は将来の姿として、すでに看護配置10対1を基準として診療実績を評価する、入院料を5段階とする姿を示した。今後は各医療機関が、自ら医療ニーズに合致した、医師、看護師、薬剤師、OT、PT、STなどの人員配置を選択する姿へと移行することとなる。これにより、医療費も自然と適正な範囲へと抑制される姿を描く。

◎ますます重要性を増すネットワーク型医療


こうした中で、医療機関同士や訪問看護ステーション、保険薬局などとの連携の重要性を増す。18年度改定では、地域包括ケアシステムの要の役割を担う、かかりつけ医に手厚い評価を行ったが、それだけでなく、看護師や薬剤師、ケアマネジャーなどの多職種連携、医療連携に手厚い配分を行った。

患者の入院前に入院生活におけるオリエンテーションや持参薬の確認、褥瘡・栄養スクリーニングなどを外来で実施し、支援を行った場合の点数として、「入院時支援加算」を新設。あわせて、退院時共同指導料についても医師、看護師に加え、薬剤師やOT・PT、ST、社会福祉士(MSW)が共同指導する場合も評価対象とするよう見直した。入院前から入院、退院までを一貫し、がんや認知症患者であっても住み慣れた地域で継続して生活できるよう促す。

看護配置7対1を確保する医療機関では、看護配置を見直し、訪問看護ステーションを併設するケースの増加も見込まれる。多死時代を迎える中で、在宅での看取り、ターミナルケアの重要性が増す中で、役割を発揮することも期待される。さらには、複数の疾患を合併し、ポリファーマシーに陥る高齢者が増加する中で、医療機関と保険薬局の連携による医薬品の適正使用を促すことも視野に入る。地域の実状に合致した連携体制が構築されることで、これまで以上にネットワーク型の医療が重要性を増すことになる。

2013年度に「税と社会保障一体改革」の方向性を示した安倍政権は、一貫した改革路線を貫いている。高齢化のピークを迎える2025年に向けて、地域包括ケアシステムを構築すべく、様々な施策を繰り出してきた。診療報酬改定も2014年度、16年度、18年度と歩みを進めている。冒頭にも書いたが、この4月はトリプル改定のほかに、地域医療計画もスタートする。都道府県の保健ガバナンスも強化され、いよいよ地域包括ケアシステムの外堀が完成することになる。

18年度改定を取材して、ひとつ見えたことがある。先の薬価制度抜本改革の時も感じたが、薬価にしても診療報酬・調剤報酬にしても、既定路線の延長に我々は存在しないということだ。逆に、この3回の診療報酬改定を取材して、その延長線上にある医療の姿の輪郭が見え始めてきた。すでに2020年度改定にむけた改革議論の火蓋は切られたと見るべきだろう。(望月英梨) 

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