18年度調剤報酬改定を読み解く チェーン薬局に厳しく 地域の保険薬局のあり方示す
公開日時 2018/02/08 03:52
超高齢社会の到来が迫り、複数の疾患を合併する高齢者が増加する中で、2018年度診療報酬改定では、医薬品の適正使用推進にひとつの軸が置かれた。保険薬局の点数としては、地域支援体制加算や、服用薬剤調整支援料を新設する。かかりつけ薬剤師が服薬情報を一元管理し、急性期病院や地域包括ケア病棟、かかりつけ医などとの連携を推進することで、いわゆるポリファーマシーや残薬などを解消する姿を描く。地域医療に貢献する保険薬局を評価する一方で、チェーン薬局については大きなメスを入れる。調剤基本料では、薬局グループ全体での処方箋回数が40万回超で、処方箋集中率が85%超、医療モールなどのように特定の医療機関と賃貸借関係がある保険薬局については新たに点数を減算する点数を新設する。この40万回超には、調剤大手チェーン上位10社が該当するとみられ、半数を超える薬局で減算を受けるとの声や、経営上の打撃があるとの声もあがっている。不採算店を閉鎖する動きもあり、過疎地などでの地域医療への影響を指摘する声もある。
18年度予算編成の過程で調剤報酬は0.19%引き上げることが決まった。一方で、チェーン薬局をめぐっては、C型肝炎治療薬・ハーボニー配合錠の偽造品問題、保険請求の付け替え請求などの問題が指摘されてきた。医療経済実態調査では20店舗以上の薬局の経営状況が黒字であることが報告された。こうしたバックグラウンドが相まって、大型門前薬局で損益率が高いことなどを踏まえ、国費ベースで60億円程度引き下げることを決めた。答申後に開かれた三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)の会見で、山本信夫会長のメッセージを森昌平副会長が代読した。
森副会長は、「大変厳しい保険財政の中、プラス0.19%という中で、既存点数の合理化、適正化を図りつつ、評価すべき部分に配分できたものと考えている」と、山本会長のコメントを紹介した。かかりつけ薬剤師が服薬の一元管理を行うことで、「医薬品の適正使用をさらに一歩前進させることにつながる。地域包括ケアシステムの実現を間近に控え、取り組むべき方向が明確に示された」と述べた。
その言葉通り、今改定では、前回16年度改定の流れをさらに一歩先に進め、地域包括ケアシステムの中で、医薬品の適正使用に貢献する薬剤師を評価した。これまで病院完結型だった医療が地域包括ケアシステムへと動く中で医薬品に携わる職種もこれまでの急性期病院を中心とした院内にとどまらず、地域の開業医や訪問看護師、ケアマネージャーやヘルパーまで広がる。こうした中で、外来だけでなく在宅医療も含めて、ポリファーマシーや残薬、さらには後発品80%時代の副作用報告まで、薬剤師が医薬品の安全対策の要を担う。一方で、敷地内薬局や大型門前薬局に代表されるような、チェーン薬局にとっては厳しい改定となった。
◎ポリファーマシー 医師と薬剤師の連携強化に期待
ポリファーマシーについては、医師と薬剤師との連携を強化し、適正使用への布石を打った。薬剤総合評価調整管理料を算定する医療機関と連携し、6種類以上の内服薬が処方されていた場合、保険薬剤師が文書を用いて提案し、2種類以上減薬した場合に125点を算定する。また、服薬情報提供料(現行25点)を2段階とし、調剤後も患者の服用薬の情報などを把握し、医療機関に情報提供を行った場合の点数を新設(30点)するほか、処方箋様式に分割調剤の様式を追加する。分割指示に関する処方箋を発行する場合は分割の回数は3回とするなど、具体的な取り扱いも明確化した。調剤後も薬剤師が患者の状況を把握することで、アドヒアランス向上や重複投薬・相互作用を防止することに期待がかかる。また、重複投薬・相互作用防止加算も現行の30点を残薬調整にかかわるものに限定し、腎機能値などを踏まえた処方変更などについては、40点の点数を新設する。地域包括ケアシステムの中で、患者が医療機関を受診する前から調剤、そして調剤後も薬剤師が継続的に患者の服薬情報を把握する薬剤師像を明確化し、調剤報酬で後押しする。
新設する「地域支援体制加算」(35点)は、現行の基準調剤体制加算を廃止し、新設される点数だ。一定以上の開局や医薬品の備蓄、24時間調剤・在宅にかかわる体制の情報提供、在宅療養を担う医療機関・訪問看護ステーションとの連携体制などに加え、医療安全に資する取り組みの実績報告、さらには地域医療に貢献する体制を有することを示す相当の実績を盛り込んだ。
実績としては、1年に常勤薬剤師1人当たり、夜間・休日等の対応実績400回、重複投薬・相互作用防止加算40回、麻薬指導管理加算10回、外来服薬支援料12回など8項目の実績要件を求める。特に、麻薬指導管理加算は外来対応を中心とする保険薬局が多い中で、在宅医療に積極的に参画する保険薬局でなければ要件をクリアすることは難しいとの声があがっている。一方で、調剤基本料で集中率などの減算を受けず、調剤基本料1を算定する保険薬局では、▽麻薬小売業者の免許を受けている、▽在宅患者に対する薬学的管理及び指導について、実績を有している、▽かかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料に係る届出を行っている――を満たせば、実績要件を求めない。チェーン薬局をはじめ、減算を受ける薬局にとっての取得のハードルが上がった格好だ。
◎調剤基本料 大型門剤薬局への厳しさ増す
調剤基本料についても、薬局グループ全体の処方箋回数4万回超の大型門前薬局についての減算があったが、この範囲を拡大する。基本料は、▽減算のない調剤基本料1(41点)、▽調剤基本料2:処方箋受付回数月4000回超かつ集中率70%超、処方箋受付回数月2000回超かつ集中率85%超(25点)、▽調剤基本料3(グループ全体4万回超から40万回以下で、集中率が85%超、医療モールなど特定の医療機関との間で不動産の賃貸借関係がある)20点—に加え、新たに、グループ全体で40万回超で処方箋集中率が85%抗、特定の医療機関との間で賃貸借関係がある場合は15点とした。さらに、敷地内薬局での調剤基本料は10点となる。