中医協総会 保険薬局の基準調剤加算に副作用報告を要件化 MR活動への影響大きく
公開日時 2017/12/11 03:52
厚生労働省保険局は12月8日の中医協総会に、保険薬局の“基準調剤加算”の新たな項目として、「医薬品の安全対策や副作用報告を要件化する」ことを提案した。政府から後発医薬品80%目標が示される中で、薬剤師が地域の医薬品安全対策に主体的にかかわる新たな体制がスタートする。基準調剤加算を算定する保険薬局は、いわば地域の中心的な存在と言える。保険薬局が地域の病院、診療所と医療連携ネットワーク(NW)を構築し、医薬品の適正使用と、これに伴う医薬品安全対策を一手に担うことになる。これまでの市販後安全対策は製薬企業のMRが主体的に関わってきたが、これからは地域医療連携NW内での安全対策体制の構築と保険薬局との連携が必須となる。少なからず今後のMR活動にも影響を与えそうだ。
◎地域包括ケアシステムに対応 自発報告増やす狙いも
医薬品の安全対策をめぐっては、地域医療が地域包括ケアシステムへと変化する中で、地域患者の高齢化に伴う多剤併用(ポリファーマシー)の増加、後発医薬品80%目標による浸透、多職種連携などが起きる中で、複雑性を増してきている。これまで医薬品の安全対策は、MRを中心に製薬企業が根幹を支えてきた。しかし、後発医薬品80%時代となり、薬価制度改革に代表されるようにローコストオペレーションが求められる中で、製薬企業だけでなく、医師・薬剤師など医療従事者からの自発報告を増やすことが必要と判断した。
医療機関と保険薬局の連携をより強固なものとし、かかりつけ薬剤師が患者の服薬状況や安全性について、医師と薬剤師が共有。服薬アドヒアランスの向上や薬物療法の安全性についての業務を推進する絵を描く。厚労省の調査ではすでに、疑義紹介だけでなく、患者の他剤の服薬状況や服薬アドヒアランスなどを医療機関と共有する取り組みが広がっているという。その結果として、アドヒアランスの向上や重複・相互作用の防止などにつながっている。
◎病院と保険薬局で事前に共同でプロトコールを作成
この日の中医協総会で厚労省は、経口抗がん剤での取り組みも図示した。病院と保険薬局で事前に共同でプロトコールを作成。かかりつけ薬剤師がチェックシートを活用し、電話でアドヒアランスや副作用の有無を患者に確認し、医療機関と情報共有を行うというもの。これにより、副作用の不安解消や対処療法の指示などもなされたという。
なお、厚労省医薬・生活衛生局の総務課と医薬安全対策課が7月10日付で事務連絡した「医薬品関係者の副作用報告ガイダンス骨子」でも、薬剤師による医療機関との患者の副作用・検査値などとの情報共有や、処方した医療機関への受診勧奨によるフィードバックなどを求めていた。情報共有の結果、薬局から副作用を報告する場合には、提出した医療機関名を連名とすることとしている。実際、薬剤師の取り組みにより副作用や相互作用、治療不十分などを事前に会うした事例を“プレアボイド”として、共有する取り組みもすでに進められている。
基準調剤加算は、保険薬局の体制面を整備する点数。かかりつけ薬剤師指導料の届け出や、在宅の業務実績などを要件としており、地域のハブとなる薬局の多くが算定している。2017年6月時点では29.9%の保険薬局が点数を算定。高い評価を得られることから、多くの保険薬局が点数確保のために取り組みが進むことが予測される。こうした中で、MR活動も転換が求められることになる。
◎調剤報酬改定 チェーン薬局の評価引き下げへ
調剤報酬の見直しでは、店舗数の多い薬局や特定の医療機関から処方箋を多く受け付けている薬局、不動産の賃貸借関係がある薬局などの評価を引き下げる。また、大型門前薬局などでかかりつけ薬剤師としての業務を一定以上行っている場合は除外されていたが、廃止を含めた要件の見直しも行う。そのほか、お薬手帳の活用などで算定できる「薬剤服用歴管理指導料」は現行では情報提供を行っていない保険薬局の評価を引き下げる方針。