中医協 入院基本料に診療実績に応じた段階的評価導入 7対1病床の転換促進
公開日時 2017/11/27 03:51
厚生労働省保険局は11月24日の中医協総会に、一般病棟入院基本料(看護配置7対1、10対1)の評価手法の見直し案を提示した。これまで7対1と10対1では診療報酬上に格差があったが、新たな評価体系では、診療実績に応じた段階的評価を導入し、現行の7対1一般病棟と10対1一般病棟との間に中間的な水準を設ける。これにより、7対1から10対1や、地域包括ケア病棟などへの転換を促す。高齢化が進み、疾病構造の変化などにより、急性期医療のニーズの減少が落ち込むことが予測される中で、地域の医療ニーズに即し、地域医療構想と合致した医療提供体制の構築を後押しする。
2025年に到来する超高齢社会に向けて、地域包括ケアシステムの構築を後押しすることは、2018年度改定の柱となっている。2025年の医療需要をみると、悪性腫瘍など、高い医療資源の投入が必要な医療ニーズは横ばいから減少に転じる。一方で、脳・心血管疾患の発症やその後のリハビリテーションや肺炎、骨折など、中低度の医療資源の投入が必要な医療ニーズが横ばいから増加に転ずる。こうした医療ニーズの変化に対応し、効率的な医療提供体制を構築するために、入院医療の評価手法を根本的に見直す必要があると判断した。
現行の診療報酬点数は、入院基本料が7対1で1591点なのに対し、10対1では1332点と開きがある。200床の病院では年間約1憶2000万円程度の差があると推計されている。民間病院などでは経営への影響が大きい。そのため、“7対1堅守”を掲げ、患者の奪い合いをする医療機関も出ていることが指摘されており、転換を妨げるひとつの大きな要因となっていた。
◎重症度・医療看護必要度の引上げが今後の焦点に
厚労省が提案した新たな評価体系では、看護職員配置に応じた基本的な評価と、重症度・医療看護必要度など実績に応じた二層の評価とする考え。
診療実績としては、受け入れ患者のいわゆる手厚い医療・看護が必要な患者の割合を測る指標である“重症度・医療看護必要度”が想定される。現行の診療報酬体系では、7対1取得の要件のひとつとして、重症度・医療看護必要度の基準を満たす患者が25%以上とされているが、今後はこの引上げがひとつの焦点となりそうだ。支払側は幸野庄司委員が「段階的に見直すのは7対1の基準を見直してこそ意味がある」と主張し、現行の25%から30%への引上げを求めた。一方で、診療側は「7対1の病院は危機的状況にある。到底容認できない話だ」(松本純一委員・日本医師会常任理事)、「30%に引き上げれば3割の医療機関しか存在しない。現場は混乱する。30%というのはあり得ない」(松本吉郎委員・日本医師会常任理事)など、現行の25%維持を求める声があがった。また、重症度・医療看護必要度については、DPCデータを活用する方針も打ち出した。
◎地域包括ケア病棟 自宅からの急性増悪患者に手厚い報酬へ
地域包括ケア病棟については、入院後14日を限度として「救急・在宅等支援病床初期加算」が取得できるが、医療必要度の高い“自宅からの入院”について、急性期病院からの転床よりも手厚い評価をすることも提案した。救急・在宅等支援病床初期加算は二段階となることになる。自宅で急性増悪し、地域包括ケア病棟に入院したケースでは、CTやMRIなどの検査の頻度が高く、容体も安定していないケースが少なくない。一方で、急性期から転院する患者は骨折などで、比較的容体が安定していることを踏まえて提案した。
◎支払側 経年的には病院経営は改善も
この日の中医協総会では、医療経済実態調査(関連記事はこちら)の結果を踏まえて、診療側、支払側の見解が述べられた。支払側は、2011年度からの経年変化を図示。16年度と18年度を比較すると、国公立を除く医療機関では収支がマイナス0.3%の赤字から0.1%の黒字に転換していると指摘した。国公立病院は人件費の増加が赤字の原因であるとし、コスト構造の転換を求めた。一方、診療側は、2015年度と16年度の経営状況を比較。一般病院での赤字が拡大し、精神病院も赤字に転落したことなどを指摘した。2014年度、16年度と2回連続でネットマイナスとなり、薬価改定財源が診療報酬本体の改定財源に充当されなかったことから、「医療機関は総じて経営が悪化した」などと主張した。