中医協・費用対効果合同部会 試行的導入で「効果高く医療費削減」品目は薬価引上げも
公開日時 2017/10/26 03:51
厚生労働省保険局医療課は10月25日、中医協費用対効果評価・薬価・保険医療材料の各専門部会の合同部会に、費用対効果評価の試行的導入に際し、「比較対照品目より効果が高く、トータルの医療費が削減される」品目は、削減される医療費の範囲内で薬価を引上げる考えを示した。費用対効果評価が悪い品目の薬価を引き下げる一方で、真に有効な医薬品を評価する。16年12月に4大臣合意された薬価制度の抜本改革に向けた基本方針では、薬価の引上げを含めて検討するとの一文が盛り込まれていた。
費用対効果評価の試行的導入の対象品目は、C型肝炎治療薬・ハーボニー配合錠や抗がん剤・オプジーボなど医薬品7品目を含む13品目。18年度の診療報酬改定ではじめて価格調整を行われることになる。対象品目選定後、企業によるデータの提出、再分析の実施を経て、最終的に総合的評価(アプレイザル)を行う。この評価結果に基づき、価格調整が行われることになる。
◎年間で500万円以上の医療費増で薬価引下げも
比較対照品目に比べ、効果も費用も増加させる品目についての価格調整は、増分費用効果比(ICER)を軸に行う。厚労省は、健康な状態で1年間延命させるために、比較対照品目に比べ1年間で500万円以上医療費が増加する場合は薬価の引下げを検討。1000万円以上コストが増加する場合には、一定の引下げ幅で薬価を引き下げることを提案した。一方で、1年間に増加する医療費が500万円を下回る場合には、価格を維持することになる。
なお、アプレイザルに際し、▽感染症対策など公衆衛生的観点での有用性、▽重篤な疾患でQOLは大きく向上しないが生存期間が延長する治療--など、社会的・倫理的影響を加味し、1項目に該当するごとに5%割り引いた値を算出し、価格調整を行う。
一方で、比較対照品目に比べて、効果は増大するが、コストを削減する場合は費用対効果評価が高いことになり、数式に当てはめてもICERを算出できない。厚労省は、▽比較対照品目(技術)より効果が高いこと(または同等であること)が臨床試験等により示されている、▽比較対照品目と比べて、全く異なる品目(技術)であること、もしくは基本構造や作用原理が異なるなど一般的な改良の範囲を超えた品目(技術)--を条件とし、これらに該当する品目については、費用が削減される範囲内で引上げも検討する考えを示した。なお、この品目については、倫理的・社会的から別途考慮することは行わない。
◎迫井医療課長「最終結論で薬価引上げ あってもいいのでは」
中医協支払い側委員の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「費用対効果の在り方から価格を上げることはあり得ない」と述べるなど、薬価の引上げに猛反発。診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)も同意した。
一方で、支払側の宮近清文委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)は、「医療コストの削減や患者にとってメリットが大きい。それが単なる改善ではなく、イノベイティブな物であれば、その効果の一部をインセンティブとして付与する仕組みがあってもよいのではないか。企業サイドのモチベーションにもつながって結果として医療費の削減につながるということもあり得るのではないかと思う」と指摘。医療の中でイノベーションをどう評価していくかを課題とした上で、「一概にNOと言っていいかどうかは、一合側委員ではあるが、考える余地があるのではないか」と述べた。診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)も、「制度化していくにあたっていろいろなことを考えたほうがいいのではないか。今後を考え上では、あってしかるべき」と述べた。ただし、新薬としての上市が数十年ぶりになるケースなど、比較する品目や技術が古くなってしまう場合などには一定の考慮をすべきとも指摘した。
厚労省保険局の迫井正深医療課長は、費用対効果評価による価格調整について、「価格を低減させるという前提ではない」と説明。「費用対効果評価の検討の結果、妥当であれば薬価維持。そうでない場合は薬価を引き下げるのでは」との考えに対しては、「技術の評価が妥当でない場合は二軸ある。加算が高すぎるということもあれば、評価を上げてもいいのではないかということはあり得る。頻度として多くはないかもしれないが、評価の最終結論として評価を上げることがあってもいいのではないか」と述べた。