16年度卸連会員企業業績概況 売上3.51%減、C肝薬の収束で マイナス幅は過去最大
公開日時 2017/08/10 03:51
日本医薬品卸売業連合会は8月9日、会員企業の2016年度(17年3月期)決算をまとめた「医薬品卸業の経営概況(速報値)」を発表し、売上高の伸び率は3.51%減だった。このマイナス幅は過去最大となる。卸連は、マイナス成長の主な要因として、▽15年度に急拡大したC型肝炎治療薬の収束▽長期収載品の後発医薬品への切り替え(=カテゴリーチェンジ)の一層の促進▽市場拡大再算定や特例拡大再算定の適用品目の売上の抑制――の3点を挙げ、特にC肝薬の収束の影響が大きいとしている。
卸連によると、1980年度調査以来、マイナス成長は今回を含めて3回ある。過去2回は97年度、14年度で、いずれも消費税率引き上げが主要因のひとつになっている。97年度は97年4月に税率が5%に引き上げられたが、前年度に税率引き上げ前の駆け込み需要(仮需)があり、結果、97年度は3.03%減となった。14年度は14年4月に税率が8%に引き上げられたが、同じくその前年度に引き上げ前の仮需があり、14年度は2.30%減だった。
16年度は消費税率引き上げとは関係ない中での初めてのマイナス成長で、過去最大規模となる。ただ、卸連は仮需のあった13年度から、C肝薬の影響が大きい16年度までの直近4年間の売上などの変動は異常値との見解も示している。
クインタイルズIMSによると、C肝薬ハーボニー配合錠の売上は薬価ベースで15年度2693億円、16年度1647億円、C肝薬ソバルディは同1508億円、713億円――だった。
卸連の鈴木賢会長は9日の記者会見で、17年度の見通しについて、「“カテゴリーチェンジ”が進むのは事実。大型品の特許切れもあり、市場の伸びは決して高くはない方向に行く」「C肝薬の(収束の)影響もおきてくる」との見方を示した。17年度は降圧剤ミカルディスやオルメテック、高脂血症治療薬クレストールなどの大型品にGEが参入する。
■営業利益率は再び1%未満に
16年度の経営概況をみると、売上総利益率は前年度比0.28ポイント減の6.72%、営業利益率は0.44ポイント減の0.83%となった。営業利益率は、15年度はC肝薬の急拡大で1%以上となったが、16年度は再び1%を割る結果となった。
人件費の伸び率は2.06%減、従業員数の伸び率は0.06%減とほぼ横ばいで、収益環境の悪化が人件費に影響したようだ。
調査は会員72社を対象に実施し、55社から回答を得た(回答率76%)。回答会社合計の年間医薬品売上高は8兆9074億円、年間医家向売上高は8兆5634億円。