中医協薬価専門部会で業界側 後発医薬品は銘柄別での収載求める 価格帯一本化に反対
公開日時 2017/04/27 03:52
中医協に製薬業界代表として出席している加茂谷佳明専門委員は4月26日の薬価専門部会で、後発医薬品の薬価のあり方について、「原則3価格帯というのが過去の経緯だが、大原則は銘柄別市場実勢価格での収載だ」と述べ、議論の俎上にあがっている価格帯の一本化については慎重な対応を求めた。価格帯の集約をさらに進めることで、安価に供給している後発医薬品の価格が引き上げられる一方、安定供給を行い、市場実勢価格が引き下がっていない製品の価格が引き下げられる、いわば“モラルハザード”とも言える状態が起きる。厚労省側は、現行の3価格帯からの集約を進める方向性を改めて示したが、診療側、支払側各側はともに、価格帯の集約に慎重な姿勢を示した。
◎各側からも“価格帯見直し”の声
厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、価格の大幅なバラつきを是正し、後発医薬品の使用浸透を進める目的で、三価格帯が導入されたと説明。一方で、すでに現在、約8割の製品で価格帯が一本化している現状を紹介した。その上で、「ジェネリック使用促進という観点と、価格を下げることの両立」する形で、価格帯の在り方を見直す考えを示した。
これに対し、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、後発医薬品の使用促進には、品質や流通の安定性確保などを通じた「現場の信頼感の醸成が不可欠だ」と述べた。その上で、「後発品への信頼感を高める、後発品メーカーの統合・再編でしっかりしたメーカー数社が中核となって後発品を支えることが大事だ」との考えを表明。ジェネリックメーカーが大規模な企業数社に統合される姿を見据えた上で、「最終的には3価格帯は変則だと思う。一定期間経って後発品が安定供給で、現場の信頼感が醸成できた時には何らかの見直しが必要だ」と述べ、銘柄別収載に一定の理解を示した。
支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、実際に価格の集約により、引上げ、引下げがどの程度起きているのか、エビデンスを示す必要性を指摘。「事象がかなり多く生じるのであれば、価格帯の在り方を見直す必要がある」と述べた。
◎初収載の値付けは各側から引下げ論 診療側・安部委員「安定供給のための配慮を」
新規後発医薬品の薬価は、2012年度、14年度、16年度と過去の3回の改定で、乖離率に基づき、連続的に引き下げられてきた経緯がある。特に、生活習慣病などの市場規模が大きい製品は、参入企業が多いことも相まって熾烈な価格競争が巻き起き、結果として乖離率も大きくなっていた。厚労省は、18年度改定でも、2016年度薬価制度改革後の乖離率を踏まえた検討を行う考えを示した。
診療側、支払側ともに、新規後発医薬品の薬価について引下げ論で一致した。支払側の吉森委員は、後発医薬品80%目標達成に向けて、これまでの使用浸透と比べ、「困難さは段違いだと現場でも実感している。80%目標の達成に資するような価格の検討も今後必要になる」と述べ、価格のさらなる引下げを視野に入れる必要性を指摘した。
一方、診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「乖離率によって価格を引き下げる場合、中にはデバイスを使っているものや原価率が高いものも含まれるはずだ」と指摘。「原則は、薬価の引下げ論でいいが、後発医薬品の供給のための配慮はすべきではないか」との考えを示した。
後発医薬品の使用浸透に際して、価格競争によるシェア獲得から脱却し、「製品の特性、医療安全のために寄与しているとかより飲みやすい、使いやすい、パッケージが優れているなどの特性での競争」へと変革することを求めた。
加茂谷専門委員は、「これから新たに収載される後発医薬品の価格を成分、剤型が異なる、過去に収載された乖離率、以前の乖離率を新たな乖離利率に適用することの合理性があるのか」と指摘。これまで薬価が引き下げられ続けた経緯を踏まえ、「すでに適切な水準にあるのではないか」と理解を求めた。
そのほか、毎年改定を見据えて中間年の薬価改定についても議論が及んだ。“価格乖離の大きな品目”に限って改定を行うことが大原則となる中で、後発医薬品の場合、一部の価格帯が価格乖離が大きい品目に該当することも想定される。支払側の吉森委員は、当該品目について改定した上で、2年に1度の全面改定時に補正を行い、三価格帯を維持することを提案した。