中医協総会 一般名処方は3割超に 後発医薬品80%時代に向け処方せん変更不可欄削除も議題に浮上
公開日時 2017/02/23 03:50
中医協総会は2月22日、2016年度診療報酬改定の後発医薬品使用促進への影響を検証した特別調査の結果について、診療報酬改定結果検証部会から報告を受けた。保険薬局対象の調査では一般名処方の割合は、31.1%で昨年度よりも6.3ポイント増。一般名処方のうち、後発医薬品が処方された割合は77.4%(昨年度:73.0%)で、後発医薬品の使用が浸透している様が見てとれた。一方で、使用促進に向けて後発医薬品の品質に対する懸念や地域間格差、一般名処方の浸透が、使用促進の課題であることも浮き彫りになった。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、処方せんの変更不可欄について、「変更不可がいるのかどうかも検討する必要がある」と指摘し、次期改定に向けて変更不可欄の撤廃に向けた議論を要望。これに対し、診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)は、「薬によっては効きが悪いというのは実際にある」と述べ、処方せんの変更不可欄の撤廃に反対の姿勢を示した。
後発医薬品の調剤率は、2016年8月時点で66.1%。政府が定めた後発医薬品の数量シェア「2017年央に70%以上」の中間目標クリアが視野に入る。一方で、80%目標の達成時期は「18〜20年度末までの早い時期」とされている。今年の年央にも達成時期の明確化が求められている中で、10ポイントの上積みはさらに高いハードルとなることが想定されており、使用促進に向けてさらなる打ち手も必要とみられている。
◎院内処方は後発医薬品使用にブレーキ? 後発医薬品の品質に懸念の声も
この日報告された調査結果でも、保険薬局では、後発医薬品調剤体制加算2(後発医薬品の調剤数量が75%以上)が30.3%、後発医薬品調剤体制加算1(後発医薬品の調剤数量が65%以上)が34.2%で、後発医薬品調剤体制加算などのインセンティブを背景に浸透が進んでいることが見て取れる。ただ、後発医薬品名で処方された医薬品における変更不可の割合は、昨年度の15.9%より減少したものの、7.0%あった。後発医薬品を積極的に調剤しない理由については、「患者が先発医薬品を希望するから」(52.9%)、「後発医薬品の品質に疑問がある」(32.8%)、「近隣医療機関が後発医薬品の使用に消極的である」(31.3%)が次いだ。
一方で、院内処方を行っている医療機関では、後発医薬品の使用が70%以上の場合に算定できる外来後発医薬品使用体制加算1の算定は20.1%にとどまっている。先発医薬品の銘柄を指定し、変更不可とする理由は、診療所、病院ともに「患者からの希望があるから」(診療所:65.6%、病院:66.9%)がトップ。「後発医薬品の品質に疑問があるから」(診療所:53.2%、病院:42.5%)が次いだ。一方で、後発医薬品の銘柄指定については、「指定することはない」との回答が最も多かったものの、指定する理由としては、「後発医薬品の中でより信頼できるものを選択して処方すべきと考えているから」(診療所:28.5%、病院:21.0%)、「患者からの希望があったから」(診療所:18.3%、病院:18.2%)となった。
患者調査では、後発医薬品を「少しでも安くなるのであれば使用したい」との回答が45.6%占めたが、「いくら安くなっても使用したくない」が12.0%を占めた。使用したくないと回答した人に理由をたずねたところ、「効き目や副作用に不安があるから」が72.6%で最多となった。きっかけとしては、「効き目が悪くなったことがあるから」(29.3%)、「副作用が出たことがあるから」(12.2%)などとなった。有効回答数は保険薬局で704件、診療所で604件、病院で306件。医師調査は478人、患者調査の有効回答数は、郵送調査で1016件、WEB調査で1040件。
◎支払側 地域間格差、院内処方の見える化を要望
支払側の吉森俊和委員( 全国健康保険協会理事)は、後発医薬品使用率に都道府県格差があることを問題視。協会けんぽのデータでも、最も浸透が進んだ沖縄では後発医薬品の使用率が8割超である一方、最も低率の徳島県では50%台後半と説明。「全体的な底上げを図る推進策、取り組みが必要だ。地域ごとの格差の要因を見える化して、ボトルネックとなっている要因は何か、推進策も含めて診療報酬上でできることはあるのか検討していきたい」と述べた。
支払側の幸野委員は、院内処方で後発医薬品が浸透しているか疑問を示し見える化を要望した。その上で、「後発医薬品を使うのが当然、と国民の意識を変えるくらいの取り組みが必要だ。処方せんの変更不可欄があるがゆえに国民がジェネリックは違うのかなという懸念を持つ要素もある。次期改定でも変更不可がいるのかどうか検討する必要がある」と述べた。あわせて一般名処方推進の重要性も指摘し、医師にはオーダリングシステムを導入することを求めた。また、患者調査の結果も踏まえて「後発医薬品使用促進の一番の担い手は薬剤師。薬学管理の腕前を発揮する大きなところなので薬剤師の方に頑張っていただきたい」と述べた。分割調剤を活用することで、患者に使用感を満足してもらいながら後発医薬品を処方するなどの方法も提案した。
そのほか、診療側の松原委員が「実際に使っているとすべてのジェネリックが完璧なものだと思えない。集約化して適切な形で作れるようにしていただきたい」と述べる一幕もあった。
◎中医協・薬価専門部会 類似薬効比較方式で外国平均価格調整外しが議論に
同日開かれた中医協薬価専門部会では、類似薬効比較方式Ⅰについて外国平均価格調整による調整を外し、外国平均価格調整の適応を限定的な運用とすることを視野に議論が進められた。外国平均価格調整は、米、英、独、仏の薬価を参照し、大きくかい離がある場合に調整に用いる。専門委員の加茂谷佳明委員(塩野義製薬常務執行役員)は、「外国平均価格調整は、欧米市場との価格との間にかい離が起きたときの補正」と強調し、運用を限定的にすることを改めて主張した。一方で、支払側の幸野委員は、外国平均価格調整が引上げだけでなく、引下げに働くケースも多いことから、「価格を決めるのは2つくらいの物差しが必要だ。流通価格で勝負しているので、スタート時点で差をつけても、公正な競争を損ねるものではない。外国平均価格調整を行うことで公平な競争がそがれるとは思っていない」と述べ、外国平均価格調整による調整を外すことに反対した。
また、外国平均価格調整の参照価格から米国を外すことも議論されてきたが、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、米国2国間協議が行われることを想定し、米国が市場拡大再算定の廃止などを要望してくる可能性を指摘。「スピード感をもって議論しないといけない」と強調した。
そのほか、C型肝炎治療薬・ソバルディ錠、ハーボニー配合錠が高薬価となった背景に、比較薬の選定があるとの指摘があがっており、この観点からも議論がなされた。診療側の中川委員は、製薬企業の負担するコストの観点から抗体医薬品などは高額となることには理解を示したが、それを参照する形で化学合成品の薬価を押し上げていることに懸念を示した。
現行ルールでは、比較薬が有用性加算を取得している場合も、除外などの規定はないが、中川委員は、こうしたケースを問題視。「このままでは薬価は高いままだ。抜本的な見直しにはならないと思う」と述べた。これに対し、厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、「医薬品の価値として有用性加算をして算定された医薬品がそれと同等ないし、同等以上の薬剤が出てきた場合、薬価を合わせるのは一定の合理性はあると考えている」と述べた。加茂谷専門委員も、「類似薬効比較方式の原則の考え方は、新薬の薬価を市場で置き換わる医薬品の一日薬価と比較する。比較薬を設定し、判断するというスキームについては、理にかなった方式だと認識している」と述べた。