厚労省の薬食審医薬品第二部会は4月30日、新薬など7製品の承認の可否について審議し、全て承認を了承した。この中には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬で、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の吸入配合剤として2剤目となる、グラクソ・スミスクラインのアノーロエリプタも含まれる。
承認が了承された品目は次のとおり(カッコ内は成分名と申請会社名)。
【審議品目】
▽アノーロエリプタ7吸入用、同エリプタ30吸入用(ウメクリジニウム臭化物 / ビランテロールトリフェニル酢酸塩、グラクソ・スミスクライン):「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用性吸入抗コリン剤および長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。再審査期間8年。13年12月に米国で承認済み。
LAMA/LABA配合剤では13年9月に承認されたウルティブロ吸入用カプセル(ノバルティス)に続き、2剤目となる。LAMAのウメクリジニウム臭化物が新規成分にあたる。定量式吸入用散剤で、1日1回吸入投与する。
▽ザイティガ錠250mg(アビラテロン酢酸エステル、ヤンセンファーマ):「去勢抵抗性前立腺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。優先審査品目。欧米で11年に承認され、14年1月時点で87の国または地域で承認済み。
男性ホルモンであるアンドロゲンの合成酵素の1つCYP17を阻害する。アンドロゲン合成を阻害し、アンドロゲン受容体の活性化を抑制することで、腫瘍の増殖を抑える。プレドニゾロンとの併用で、1日1回1000mgを空腹時に経口投与する。同じ適応の薬剤としては、この3月に承認されたイクスタンジ(成分名はエンザルタミド、アステラス)がある。
▽ジェブタナ点滴静注60mg(カバジタキセル アセトン付加物、サノフィ):「前立腺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。優先審査品目。米国で10年、欧州で11年に承認されており、14年1月時点で85の国または地域で承認済み。
細胞内の微小管に作用して細胞増殖を阻害する。同様の適応を有するタキサン系抗がん剤にドセタキセルがある。治験のうち、海外で実施されたフェーズ3試験は、ドセタキセルで治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象としている。
▽クレナフィン爪外用液10%(エフィナコナゾール、科研製薬):「皮膚糸状菌(トリコフィトン属)による爪白癬」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。海外ではカナダで承認済み。
爪白癬は一般的に爪水虫と呼ばれ、真菌の一種が原因で発症する。白癬以外の真菌を含む爪真菌症の推定患者数は1100万人。クレナフィンは、真菌の発育に必要なエルゴステロールの生合成を阻害する。科研製薬の創製品で、爪真菌症での外用薬は初となる。
▽デルティバ錠50mg(デラマニド、大塚製薬):「本剤に感性の結核菌による多剤耐性肺結核」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。4月28日に欧州で承認された。
既存治療への耐性を有する多剤耐性結核菌に使用する初の薬剤で、該当患者数は年間110~120人とされる。結核菌特有な細胞壁成分のミコール酸の生成を阻害する。大塚製薬が創製した。
▽イムノマックス-γ注50、同注100(インターフェロンガンマ-1a遺伝子組換え 塩野義製薬):「菌状息肉症、セザリー症候群」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。同適応の海外承認なし。
菌状息肉症、セザリー症候群は皮膚T細胞性リンパ腫の一種。推定国内患者数は1500人程度。平均生存期間は約10年という。腫瘍細胞に直接作用し、増殖を抑えるとともに、免疫反応による腫瘍細胞傷害作用により効果を発揮する。
▽ランマーク皮下注120mg(デノスマブ遺伝子組換え、第一三共):「骨巨細胞腫」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。同適応では米国など7の国・地域で承認済み。欧州で承認審査中。
骨巨細胞腫は、手足の長い形状の骨である長管骨や脊椎などに発現する骨腫瘍で、20~30代に多く、新規発症患者は日本で2541人という。日本でこの疾患に適応を持つ薬剤はない。骨の破壊に関わる破骨細胞に関与するRANKリガンドに対し、モノクローナル抗体である同剤が結合することで、骨の破壊を抑える。
【報告品目】
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査で承認して差し支えないとされ、部会での審議は要しないと判断されたもので、今回は次の1製品のみ。
▽塩酸バンコマイシン点滴静注用0.5g(バンコマイシン塩酸塩、塩野義製薬):「バンコマイシンに感性のMRCNSによる敗血症、感染性心内膜炎、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、骨髄炎、関節炎、腹膜炎、化膿性髄膜炎」「MRSA、MRCNS感染が疑われる発熱性好中球減少症」を効能・効果に追加する新効能医薬品。再審査期間なし。
追加する適応については、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で、海外で実施された比較試験で対照薬の有効性及び安全性を大きく下回らないことが確認され、学術雑誌や教科書でもその使用が推奨されていることから公知申請に該当すると判断された。それに基づき同社が公知申請した。特例により、同適応に対しては既に保険適用されている。