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中医協 診療側・長島委員 薬価評価でラグ解消に疑義 24年度改定で加算実績も“変容”欠く業界に苦言

公開日時 2024/09/26 06:00
中医協診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は9月25日の中医協薬価専門部会で、2025年度薬価改定に向け、「残念ながら貴重な医療財源を投入して、薬価で評価しても効果が期待できないと判断せざるを得ない」と製薬業界に苦言を呈した。イノベーションの推進を柱として施行された2024年度薬価制度改革について厚労省保険局医療課は、補正加算が充実されるなど、実績をあげていることをデータとして示した。一方で、こうした状況を把握しているはずの製薬業界はヒアリングに際し、行動変容どころか意識変容が起きていることさえ明確に示せなかった。この日の中医協でも、薬価による評価がイノベーション拡充につながることに疑義が示されるなど、製薬業界の姿勢に診療・支払各側から苦言が相次いだ。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「市場実勢価格に基づく改定にとどまらず、薬価改定ルール全般について検討する必要がある」と指摘。新薬創出等加算の累積額控除について言及し、「最低限」ルールを見直すことを改めて求めた。

◎24年度改革後の収載品 補正加算の適用高い傾向に 迅速導入加算は2品目に適用

2024年度薬価制度改革では、イノベーション評価が柱の一つとなり、迅速導入加算の新設などがなされた。実際、すでに薬価制度改革の影響は有用性系加算など補正加算の適用状況に現れ始めている。今年8月までに収載された新薬(47成分)と23年度に収載された新薬(36成分)の補正加算の適用状況を比較したところ、加算がゼロだった成分は23年度の11成分に対し、24年度は6成分となるなど、「全体的に今年度は昨年度より高い加算が認められている」(厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官)状況にある。具体的には、有用性加算1・2、市場性加算、小児加算のいずれも高い加算率となった。また、新設された迅速導入加算は、2品目で適用された。さらに、革新的新薬については薬価改定時に加算が充実されたのが9品目あるなどの実績をデータで提示した。このほか、新薬創出等加算については企業要件が撤廃されたことで加算の適用を受けた企業は過去最多となった。

事務局はこの日の中医協に25年度薬価改定について、政府が6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2024)では「2025年度薬価改定に関しては、イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その在り方について検討する」とされているとしたうえで、
「25年度薬価改定の在り方を検討するにあたり、を踏まえ、イノベーションの推進や国民皆保険の持続可能性等への考慮をどのように考えるか」を論点にあげた。

◎診療側・長島委員 ドラッグ・ロスめぐり製薬業界の使命問う

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「薬価上の措置がイノベーションの推進等に実際にどのような効果があるのかが最も重要だ」と述べた。業界ヒアリングを踏まえ、長島委員は「このような企業・業界の意見では、残念ながら貴重な医療財源を投入して、薬価で評価しても効果が期待できないと判断せざるを得ない」と指摘。「薬価で評価されたら、国内のドラッグ・ロス対策に取り組むというのではなく、日本の患者さんのために有用な医薬品をいち早く届けるために精一杯頑張るという意識で取り組んでいただき、そのために必要なことを中医協で検討していくというのが、公的医療保険における本来のあるべき姿ではないか。その上で、業界から具体的で前向きな取り組みをしっかりと示していただきたい」と述べた。

◎診療側・森委員 24年度改定のイノベーション評価「関係者の納得する行動や成果」求める

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「関係業界は、まずは意識の変容をするということが非常に重要だ」と指摘。「しっかりと取り組んでいるというプロセスの変容を見えるようにしていただきたい。最終的には革新的新薬の開発に結びつくような行動で示していただきたい」と強調。「24年度薬価制度改革が良かったものと関係者が納得できるような行動や成果を期待している」と釘を刺した。

◎支払側・松本委員 「最低限、新薬創出等加算の控除を」 全ルール検討を

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、24年度薬価制度改革で補正加算の加算率の適用が柔軟に判断することが可能になり、製薬業界の要望してきたように収載時に高い薬価がついていると説明。「我々健保連といたしましてはイノベーションが十分評価されている、あるいはその枠組みはしっかりできていると考えている」と述べた。結果として企業でイノベーションの推進につながったかは「まだはっきりしない」としながら、「今後、企業の開発意欲がより高まり、実際に企業行動が変わっていけば加算の対象品目や加算率がさらに増加し、保険財政への影響が大きくなることが想定される」と指摘。市場拡大再算定もルール変更で予見性が高まったとして、「25年度の薬価改定におきましては、国民皆保険制度の持続可能性とのバランスをより強く意識すべき。健保連としては、市場実勢価格に基づく改定にとどまらず、薬価改定ルール全般について検討する必要があると考えている」と述べた。

特に、新薬創出等加算の累積額控除に言及。「イノベーションの評価が既に充実されたことを踏まえると最低限、25年度に(累積額)控除し、保険財政に還元していただきたいということは改めて主張させていただきたい」と述べた。

支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、「ドラッグラグ/ロスは、より良い医療のため、一刻も早い解消を願うものの、薬価のみで対応する問題ではなく、一方、健全な医療保険財政は国民皆保険の中、そうしたより良い医療を受けるための前提となるものであり、国民負担の抑制も国民の立場に立つと非常に重要な問題であると考えている。そのためにメリハリのついた対応が必要になる」と述べた。

◎支払側・奥田委員が理解求めるも診療側・長島委員「具体的に示さない限り議論は進まない」と釘

支払側の奥田好秀委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)は、医薬品開発は10~15年の開発期間がかかると説明。「今年開発要請したから来年出てきますか、そういうものではない。国民皆保険の持続性とのバランスも考慮しながら、今後もイノベーションの推進に対する適切な評価並びに環境整備について考慮していく必要がある」と述べた。

これに対し、診療側の長島委員が再度、「薬価上の対応がどのような効果をもたらしたのかは少なくとも、業界企業の内部ではっきりわかる。具体的にこれまで何をして、今後何をするのか、もっと具体的に明らかにしない限り、議論は進まないことを再度強調させていただく」と釘を刺した。

◎製薬業界調査 新薬開発が薬価制度の動向による影響を受けない企業も

製薬業界が8月7日にヒアリングで示した製薬30社を対象にした調査によると、24年度薬価制度改革について「あまり支持できない」と回答した企業が1社、「どちらともいえない」と回答した企業が1社あった。これについて問われた専門委員の石牟禮武志氏(塩野義製薬渉外部長)は、回答した企業について「小児用医薬品の評価充実や、迅速導入加算など個別の改革項目について前向きに受け止めており、今後の開発にもポジティブな影響が期待できると回答をしている。一方で、今回の改定において市場拡大再算定が適用された製品があり、経営に大きな影響が生じたことが、回答の選択に影響を与えた」と説明した。

24年度薬価制度改革について回答した30社のうち、「特に影響なし」との回答した企業が2社あった。石牟禮専門委員は、「以前から日本国内での開発承認を最優先に行う方針とされており、今後もこの方針に変更はないということ。新薬開発が、薬価制度の動向による影響を受けないという意味で、今回の薬価改定による新薬開発の影響は「特にない」と回答した」と説明した。

薬価制度改革による新薬開発計画の変更などの影響を示した例が少なく、具体性を欠くとの指摘が相次いだことを踏まえ、「もし、業界からの意見陳述の機会があったら、改めてこの辺りの構造については取りまとめてご報告できるように準備をさせていただきたい」と訴えた。

診療側の長島委員は、「もしヒアリングの機会があれば、そもそもの根本の意識として、薬価で評価されない限り国内のラグ/ロス対策に取り込まないというような意識を変革していただかなければならない。どのように意識が変革されているのかぜひお聞かせいただきたい」と述べた。



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