参天製薬・新中計 構造改革とリージョン売上最大化の2軸で収益拡大 25年度売上収益2800億円目指す
公開日時 2023/04/17 04:47
参天製薬は4月13日、「2023-2025年度新中期経営計画」を発表した。2025年度までは構造改革とリージョン売上最大化の2軸で収益を拡大する方針を提示。計画最終年度の売上収益2800億円、コア営業利益560億円の達成を掲げた。オンラインで会見に臨んだ伊藤毅社長兼CEOは、生活者・患者貢献価値の最大化に向けて「戦略・組織運営方針を抜本的に見直す必要がある」と強調。「拡散したリソースを医療用医薬品事業(Rx)とそれに直結する取り組みに集約する」と述べ、構造改革による収益改善を急ぐ考えを示した。
伊藤社長は参天製薬を取り巻く環境変化に触れ、売上収益が堅調に推移したことを評価しつつも、本社機能の人員拡大や海外人材登用による人件費の高騰、さらに中国での売上鈍化、米州での赤字継続、コストコントロール不十分によるSG&A増大などで、当初見込んだコア営業利益率が停滞から悪化傾向を示していると指摘。さらに、日本以外の中国、EMEAなどのリージョンで生産性がほぼ横ばいに推移するなど、期初見通しとのギャップが生じているとの認識を示した。
その上で、新中期経営計画達成に向けた「成長に向けた基本方針」については、①構造改革による収益性の改善、②リージョン売上最大化と2026年度以降を見据えた投資-を行う方針を強調した。構造改革では、米国事業の合理化や投資の見直し、コストの最適化、生産性向上-を推進することで、25年度までに計150億円の収益貢献を見込んだ。このうち生産性の向上については、これまでの人員を拡大して売上高を伸ばす手法から脱却し、成長戦略に即した最適な人員体制に移行する考えを示した。早期退職ではなく、退職者の補充を必要最小限にとどめて対応する方針で、伊藤社長は、「MR数を基本的に減らしていこうという考えを持っているわけではない」と述べた。
◎米国事業 売却や権利譲渡による合理化を23年度上期中に完了 赤字ゼロへ
22年度に80億円の赤字を計上する見通しの米国事業については、売却や権利譲渡による合理化を23年度上期中に終わらせ、赤字をゼロにする。伊藤社長は、「米国は製品に相当な競争力がなければ厳しい市場だが、今の製品にそこまでのものはない。今の開発パイプラインは米国市場で勝負できるものがあるので、成功させて米国市場に再挑戦したい」と語った。
国内事業については、患者ニーズに沿った新たな剤型の開発や、緑内障受診継続ツール・ACT Packの利用施設の拡大に取り組むなど、同社の存在感を強化していく考え。25年度の目標売上高2800億円のうち、日本で1500億円を計画する。このほか、中国で360億円、アジアで320億円、欧州など「EMEA」で610億円とした。国内事業に比べ、生産性が低くなっている海外事業については、生産性の改善に取り組む。
日本市場をめぐっては、主力の眼科用VEGF阻害剤・アイリーアにバイオシミラー(BS)が参入することが見込まれている。伊藤社長は、BSの参入時期やAGの準備など「いくつかのシナリオがある。適切な数字を計画のなかに織り込んでいる」と説明した。影響については、従来品と比べ、点眼回数を1日3回に減らしたドライアイ治療用点眼剤・ジクアスLX点眼液3%や、3月に承認申請したアレルギー性結膜炎治療薬・エピナスチン塩酸塩眼科用クリームなどで補う考え。伊藤社長は、「これらの製品群の価値を市場に伝えていくことで、パテントクリフをカバーしていく」と話した。
◎2026年度以降 近視や眼瞼下垂など大型のパイプライン製品の価値貢献機会に期待
一方、26年度以降は、近視や眼瞼下垂など大型のパイプライン製品によって、新しい価値貢献機会の創出を目指す。25年度の上市を目指す近視の進行を抑制する新製剤については、ピーク時売上を約600億円と見込む。潜在患者が多く存在することから、受診から治療継続までに多くの課題があるとして、医療アクセスの向上や治療継続にも力を入れる。また手術難易度が高い眼瞼下垂については、利便性の高い点眼薬を26年度に上市することを目指す。ピーク時売上で約450億円を見込んでおり、伊藤社長は、「相当な大型製品ということになるのではないか」と期待を寄せた。