サワイグループHD 米事業再構築へ USL社の会長兼CEOに中岡卓氏 本社のグリップで早期黒字化目指す
公開日時 2022/05/12 04:50
サワイグループHDの末吉一彦社長(グループCOO兼CAO)は5月11日の決算説明会で、減損損失688億円を計上した米国連結子会社Upsher-Smith Laboratories, LLC(USL社)の事業再構築に着手する方針を示した。執行役員でグループ戦略企画担当役員兼グループ戦略企画部長の中岡卓氏をUSL社の会長兼CEOに就任させ、本社のグリップを強める。早期黒字化への施策として、研究開発コストを大幅に削減するほか、原薬調達先の見直しなどで売上原価率を低下させるなどの方策を展開する。一方、開発品戦略は他社との連携や成功報酬型の取引構造に転換することで、開発ポートフォリオのリスクを低減させるなどの方策を実施するとした。
サワイグループHDの22年3月期決算は売上高1938億1600万円(対前年比3.5%増)コア営業利益263億円2100万円(同22.7%減)、営業利益は▲358億8800万円の赤字となった。とくに業績インパクトが大きかったのは米国事業で、688億円を減損損失計上(内訳: のれん・無形資産 659億円、有形固定資産 29億円)した。
主な要因は、米国の主要GE市場への相次ぐインド系企業の参入によるもの。末吉社長は、「本格的なインド企業の展開が相次ぎ、加えて米国では3大卸への集約もあり、価格競争がより促される環境が続いた」と指摘。その結果、同社の主力製品の売上が約4割減、それに準ずる製品の売上も1割減となった。末吉社長は、「業界全体に地殻変動が起きる中で、それらが復活することはないとの判断のもと計画を見直すことにした」と明かした。
◎コスト圧縮策でコア営業利益、営業利益とも黒字化目指す
一方で米国事業の早期黒字化への施策について末吉社長は、価格の下落傾向が今後も継続すると見通しながらも、「ブランド薬の増収でこれをカバーする」と強調。また、コスト圧縮策については、「構造改革や収益性の低い開発品目を削減するなど、ポートフォリオの合理化によるR&Dコストの削減に着手している」と述べ、あわせて原薬調達先の見直しなどによって原価率を低減する考えを明言した。さらに、開発戦略については、「自社から他社との連携に舵を切り、成功報酬型の取引構造にすることで開発リスクを低減する」と述べた。次期業績予想の米国事業における売上収益は、為替影響を見込んで322億円を計上している。また、コア営業利益、営業利益とも「引き続き事業環境は厳しいものの、営業利益黒字化を目指す」とした。
◎中岡氏は5月13日付でUSL社の会長兼CEOに就任
なお同社は、USL社のRusty Field社長兼CEOの退任に伴う人事を発表した。すでに同社は4月7日付でRich Fisher戦略企画部シニアヴァイスプレジデントが社長兼COOに就任しており、5月13日付で同社の取締役管理担当(Executive Administration)の中岡卓氏が会長兼CEOに就任する。なお、中岡氏はサワイグループHDにおいても、6月24日付で上席執行役員グループ米国事業担当役員兼グループ戦略企画部管掌に就任する予定だ。
◎国内事業 20年度薬価収載品は前年比30%増 国内業績を牽引
22年3月期の国内事業について末吉社長は、「薬価改定に加え、他社の供給停止等による限定出荷はあるものの、20年度収載製品の売上増などで売上収益は前期を上回って着地できた」と強調した。特に20年度薬価収載品については前年比30%増と国内業績を牽引した。中期的な市場シェア拡大に向けた取り組みでは、は小林化工の生産活動に係る資産および人員の譲り受けを目的に設立したトラストファーマテックの社員への研修体制を整備し、23年4月の初出荷を目指す。また、21年10月に決定した第二九州工場の新固形剤棟建設投資を進め、24年には30億錠の生産能力を確保したい考えを示した。これにより、現在の生産能力155億錠を24年度には205億錠まで増強し、その後215億錠まで拡大する方針を説明した。