提供:WXMS Project Lab.
株式会社SUBARU/
慶応義塾大学 理工学部 管理工学科Nakanishi Lab.
※「WXMS Project Lab.」と銘打ってスバルを中心にプロジェクトを推進中.
企業活動において効率性や合理的な思考・行動が重要であるのは論を待たないが、それだけで良い仕事ができたり、プロジェクトが成功するとは限らない。ビジネスパーソン一人ひとりの達成感や愛着、心理的適応といった多様な体験価値が仕事へのモチベーションを上げ、生産性を高める原動力になっている場合が少なくないからだ。働く中でのユーザーエクスペリエンス(UX:体験価値)、すなわちワーカーエクスペリエンス(WX)の考え方や意義に注目が集まる所以である。WXMS Project Lab.ではMR自身による営業車の車両選択を通して、製薬業界におけるWXの向上と持続を目指した環境・仕組みづくりに取り組んできた。自分の意思で物事を決めたいという人間の本質的な欲求を叶えて、求められること以上の能力を引き出す──。同プロジェクトが切り拓こうとしているのは、このような世界である。
人が持つ本質的な特性
コロナ禍で浮き彫りに
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークが浸透し、さまざまな分野・領域でデジタルトランスフォーメーション(DX)への動きが加速するなど、社会の変革に弾みがついている。人々の生活や働き方を良い方向に変えていくうえで、テレワークやDXの推進は欠かせない要素であり、コロナ禍におけるプラス面と評価することも可能だ。しかし、一方であまりにも急激な環境の変化に、心が追いついていないような違和感を抱いている人も少なくないのではないだろうか。
WXMS Project Lab.に参画する慶應義塾大学理工学部教授の中西美和氏はその理由について次のように分析する。「コロナ禍による変化に適合していくことに対し頭では必要だと理解していても、腹落ちして向き合っている方がどれくらいいるかということです。人は生まれたときから自分の意思で行動したいという心理的な欲求を持っていますが、今回のコロナ対応では私たち自身でコントロールできる部分が少ないこともあり、残念ながら内発的なエネルギーで状況を変えていこうという機運が欠落しているように感じます」。DXの推進などによって新たな社会のあり方を模索する好機ではあるものの、変革の掛け声だけが先行し、人々の心を捕らえ揺り動かすまでには至っていないとの指摘である。
逆説的に言えば、コロナ禍における変化への適合が試みられる中、図らずも自分の意思で物事を決めたいという人間の本質的な特性に光が当てられ、その重要性が再認識されたと捉えることも可能だろう。このような人間の特性が何よりも働き方や人々の生活、そして社会を変えていく力になりうるということだ。
「社会やシステム、環境や制度などの急激な変化の中にあっても、人が求める本質的な価値について忘れずにフォーカスし、方法論を考えていかないと皆が目指す社会的価値は得られません。なぜならシステムや環境を変えていくのも、最後は人に他ならないからです」と中西氏は指摘する。
WXなど心理的な価値は
効率性・生産性向上の基盤
ワーカーエクスペリエンス(WX:働く中での体験価値)も、ビジネスパーソンによる主体的、自律的な活動の中で得られやすく、自分の意思で決定したいという人間の本来的な欲求と通底している。働く人のモチベーションを上げ、仕事の生産性を高めていくうえで、WXの向上は有力な方法論の一つとなりうる。
「一昔前は生活の糧を得るために働くという考え方が主流だったわけですが、今はそれに加えて、働く中で得られる幸福感や満足感という心理的な価値が重要であるという考え方に重きが置かれるようになっています。単に効率性や収益の向上を目指すだけではなく、効率や生産性などを上げていく基盤として働く人の本質的な価値に目を向けていくことが企業には求められていると思います」(中西氏)
実際にいくつかの研究において働く人の心理的な価値を高めることにより、責任感や持続性、創造性などにおいて求められている以上のパフォーマンスを発揮することが明らかになっている。ある実験では、在庫管理に定められたスケジュールでマニュアルどおりに作業員に棚をチェックしてもらうケースと、スケジュールもチェックの仕方も作業員の裁量に任せて委託したケースを比較したところ、後者のほうが作業ミスは少なく、さらに作業時間も短縮したという。裁量権を与えられたことによって作業員は主体性をもって働くことへの意義や面白さを見いだし、仕事のやり方に創意工夫を凝らしたからだ。
また、WXMS Project Lab.が営業職を対象に実施したWXに関するアンケート調査からMRの自由記述を抽出したところ、「医師からの質問を社内で調べて、迅速に対応して感謝された」「自らの働きかけによって、1年以上来院されていなかった患者さんの無事が確認できた」など、定められた仕事を無事やり遂げたり、あるいは給与が上がるといった従来的な仕事への価値だけではなく、人とのつながりの中で相手に認められたり、微笑ましい気持ちになるなどの体験価値を挙げるMRが少なくなかった。
「AIの活用やデジタル化は、過去のデータに基づいた合理的な方法を導き出す、またはプログラムされた方法を正確に遂行する、など、「期待されること」にできるだけ近い結果を出すことに長けていますが、人間はモチベーションによって「期待されること」を超えて、より優れたことを追求することができる、創造することができるという特性を持っています。この特性を引き出す一つの鍵がWXであり、これを高めるための工夫をしていく余地はまだまだあると考えています」と中西氏は話す。つまり企業側には、日常的にビジネスパーソンがWXを獲得し、それを維持・向上できるような環境やデザイン、仕組みをどうつくっていくかが問われている。
営業車を“選べる環境”つくり
MRのモチベーション向上を支援
その取り組みの1つとしてWXMS Project Lab.で進めているのが『選んで試す、使ってみる。』をキャッチフレーズに、MR自身による営業車の車両選定を普及させていくプロジェクトだ。個々のMRの主観的価値や嗜好に合った営業車を選定できる環境をつくり、カルチャーとして定着させていく狙いがある。
「先ほどのアンケートなどで、医師に感謝されたり、認められるなどの良い体験した後、自分に合った車や、愛着のある車に乗って帰るか否かでMRさんのモチベーションが大きく変わってくることがわかってきています。もちろんWXを大切にし、高めていくための仕掛けやアイテムは他にもいろいろあると思いますが、われわれは自動車を通して、MRさんの働き方の質や生産性を上げていくお手伝いをしていきたい」と株式会社SUBARU法人営業部の小林直純氏は話す。
先述したように裁量権の付与はモチベーションを高める源泉の1つ。リモートワークの浸透を背景に“第2のオフィス”になりつつある営業車を自分で選べるとなれば、その行為自体が高レベルのWXであり、また他のWXを高め、持続させていく効果もあるというのだ。
とはいえ、現状では製薬企業による車両選定は多くの場合、導入コストや燃費、企業活動としての環境への配慮などが基準となり、MRが仕事に集中できる車という視点が不足している。MRもそのような選定基準に対して冒頭で紹介したような“違和感”を抱きながら、「環境への配慮」と言われればそういうものかと受け入れざるを得ないのが実情ではなかっただろうか。
同プロジェクトは、こうしたリース車両に関する既存のシステムや固定観念に楔を打ち、搭乗者の主観的価値をベースに選択肢を広げていこうというもの。「MRさんが自分に合う車や好きな車に乗って高いモチベーションで仕事をしてもらい、MRも企業も幸せになるという世界観をつくり出したいという思いがあります。“選べない環境”から“選べる環境”に変えていきませんかという提案です」と小林氏は説明する。
従来どおりCO2削減などに営業車の価値を見いだすMRはいるだろうし、安全性やブランド力などを重視する人もいえるだろう。例えば、大柄の方は自分の体格に合った車両、年配で視野が狭くなった方はその視野に合わせた車両など、自身の体格・状況に応じて車種を選択することにより快適性や安全性も高まる。いずれにしても重要なのはMR一人ひとりが営業車を自ら選定できる点だ。実際、会社支給のケースと比較して事故が大幅に減少する、または車両に対する取り扱いが丁寧になるなど、大きな違いが現れるというデータもある。
MR数は減少傾向である一方、多くの製薬企業はスペシャリティ領域の新薬開発、市場開拓に注力していかなければならない状況にある。少数精鋭での営業体制を余儀なくされる中、力量のあるMRの確保や育成がより急務となるだけに、そうした面からも “選べる環境”の必要性が高まるのではないだろうか。デジタル化を中心とする社会変革が進む今だからこそ、より人の特性に目を向け、モチベーションや能力を高めていくという発想の転換が求められる。
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