本記事のポイント
●デジタル化が進んだ今でも紙の資材や講演会案内状などの根強いニーズがある
●医療従事者への情報資材提供活動はスピードが最重要
●質の高い印刷資材を迅速に提供していくためには「資材のオンデマンド化」が鍵になる

ラクスル株式会社は2022年2月18日、コロナ禍におけるプロモーション活動の見直しなどをテーマにオンラインセミナーを開催した。COVID-19によるパンデミック下で製薬企業から医療機関への情報提供のあり方が大きく変わろうとしている中、医療従事者との接点を確保・強化していくための新たなプロモーション資材のあり方や活用法などを示していく狙いがある。セミナーでは、杏林大学医学部付属病院の薬剤部・薬剤科長、若林進氏を招聘して医療従事者が求める情報提供活動について語ってもらうとともに、同社ラクスル事業本部エンタープライズ事業部・部長の平光竜輔氏が、プロモーション資材の小ロット発注・オンデマンド化を実現する「製薬企業向け印刷・プロモーション支援サービス」を紹介した。同サービスによってもたらされる、これからの情報資材提供活動のあり方や価値についてレポートする。

製薬企業が作成する患者さん用資材
紙媒体での提供ニーズは変わらず

ラクスル株式会社は「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」をビジョンとして掲げ、レガシ―産業にテクノロジーやプラットフォームといった概念を持ち込むことによって、産業構造そのものを変え、新たなビジネスモデルの構築・提供を目指している。現在、物流シェアリングプラットフォーム「ハコベル」、広告プラットフォーム「ノバセル」、情報システム部のプラットフォーム「ジョーシス」、そして印刷のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」の4つの事業が同社の柱だ。中でも、ラクスルはプロモーション資材の小ロット注文や短納期などを可能にし、コスト低減や営業機会の最大化を図るプラットフォームとして、製薬業界でも活用され始めている。

セミナーでは、Monthlyミクス編集長の沼田佳之氏がファシリテーターを務め、杏林大学医学部付属病院の若林進氏がMRの情報提供活動における現状や課題、コロナ禍における医療従事者との接点のつくり方などに関する所見を述べた。訪問規制などで激減したMRと医療従事者との面談について、「オンラインが多くなり、回数は減ったものの、ある程度の時間を取って密度の濃い面談ができる。言い換えれば、資料を渡すだけのMRは求められていません。メールで十分ですし、資料の内容やその裏付けなどをきちんと準備していかないとMR活動は立ち行かなくなると思います」と若林氏は指摘する。

またオンライン面談と同時に、ウェビナーによる情報提供が増えている。会場に行く時間や手間がかからないほか、全国で開かれる講演会に参加できることから医療従事者には好評だ。しかしながら一方で、コロナ禍の副産物としてMRや製薬企業から送られてくるメールが急増し、講演会の案内や告知がその中で埋もれてしまうことも少なくないという。若林氏も「見逃してしまって参加したい講演会に参加できないのは非常に残念です」と述べたうえで、「中には直接、案内状やチラシを送ってくれる企業やMRさんもいます。紙だと院内でも共有しやすいので非常に助かっています」と話す。言い換えれば、メールでの案内に加えて、チラシなどでリマインドを掛けることが、ウェビナーの参加率アップにつながりそうだ。

一昔前はプロモーション資材といえば紙媒体であったが、ここに来て急速にデジタルへの置き換えが進み、病院内でもペーパーレス化や在庫管理が大きな課題となっている。一方で患者さん用の疾患や薬物療法に関する説明資材に関しては紙媒体へのニーズがいまだ根強い。「やはり患者さんには綺麗なものを渡したいので、製薬会社さんから提供してもらった資材を渡すのですが、すぐに足りなくなります。そういう場合に在庫管理の問題もありますから、必要なときに必要な分だけ印刷して持ってきてもらえる仕組みがあると非常にありがたいと思います」と若林氏は要望する。デジタルによる効率性や利便性が進む半面、丁寧さや温もりを感じられる紙媒体の重要性が浮き彫りになっているといえる。このプロモーション資材の印刷を迅速かつ低コストで実現するサービスがラクスルの「製薬企業向け印刷・プロモーション支援サービス」である。

「製薬企業向け印刷・プロモーション支援サービス」の資料請求

発注から短期間で資材を提供
資材のオンデマンド化で廃棄ロスの大幅削減も可能に

コロナ禍による製薬企業を取り巻く環境変化として、同社の平光竜輔氏は▽より利益を生み出していくためのコスト構造の大幅な見直し▽営業所の統廃合、書類・手続きの電子化、資材や消耗品の直接手配などによる働き方改革▽対面営業機会の損失によるオンライン面談や情報提供機会を逃さないスピード感ある体制づくりの推進──の3つを挙げ、コスト削減や業務見直しの動きが加速していると分析する。

こうした中でプロモーション資材の取り扱いも変化を強いられているが、うまく対応できていない企業が少なくない。例えば、営業所でセミナーの案内状や資料が印刷できないという状況において、印刷が必要になる場合にコンビニ印刷やモバイルプリンターを使わざるを得ず、結果として低品質・高価格になるといったケースだ。また、本社のマーケティング部やビジネスユニットで全国共通の資材を大量に制作することにより、MRを介して医療従事者の元に届けられるまで時間がかかって営業機会の損失を招いたり、使われなくなった資材の廃棄、あるいは在庫ロスといった課題を抱えている。「これまでの製薬企業のプロモーション資材提供活動は、必要なときにすぐもらえないのに、必要ではない資材は院内に山積みになっているなど、医師をはじめとする医療従事者とのニーズと乖離していることが残念ながら多いです」と平光氏は指摘する。

ラクスルの「製薬企業向け印刷・プロモーション支援サービス」は、各営業所のセミナー資料や案内状などを同プラットフォーム上で注文・印刷することにより、コンビニ印刷や他ネット印刷などに比べてコスト削減および品質アップを図れる。加えて、マーケティング部などが制作するプロモーション資材に関しては専用の発注システムに登録し、各営業所は同システムを使って欲しい資材のみを発注することで短納期を実現し、最短で翌日に発注者のもとへ資材を届けることが可能だ。「欲しい資材のオンデマンド化により、スピーディーに対応できる体制をつくれることから、医師との接触機会を逃さずに効率的なプロモーション活動へとつなげていくことが可能です」と平光氏は説明する。

加えて、チラシは10部、冊子は1部からの小ロット対応で、資材の必要量の予測と実需のギャップを最小化し、結果的に在庫ロスの削減に繋がり、コストの削減が実現できる。そのほか、資材管理の見える化により本部で各支店・営業所の発注状況などの把握も容易になる。それらのデータはプロモーション活動における課題の抽出、あるいは新たなニーズの発掘にも有用であろう。

先出の若林氏は同サービスについて、「特に患者さん用の資材はカラー印刷による高品質なものが好まれます。また資材は院内で適切に在庫管理しておりますが、患者さんが多く来院された時に資材が足りなくなることもあります。その際に早く提供してもらえる仕組みがあると非常に助かります」と評価。また、薬に関する情報収集に関しては「今はMRの訪問自粛でデジタルの情報が頼りですから、製薬企業のホームページには頻繁にアクセスしています」とも言及している。

一方、「専用の発注システムを応用することにより、医療従事者が直接、プロモーション資材をオーダーする仕組みをつくることも可能です。例えば、医師がほしいときに注文できる医療従事者向けの資料請求サイトをつくることで、医師との接点を効率的に構築することができると思います」と平光氏は語り、ラクスルのサービス拡大を図っていく考えを示す。確かに製薬企業のホームページから時間を問わず資料請求などができると便利である。コロナ禍という追い風の中で、よりアクセス数を増やしていくための各企業によるオウンドメディアの充実がより重要となりそうだ。


デジタルの中でアナログを活かし、またその逆も然り。ラクスルの「製薬企業向け印刷・プロモーション支援サービス」が製薬企業のプロモーション活動にどのような変革をもたらすのか、要注目である。

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