【速報】21年9月薬価本調査 平均乖離率は約7.6% 談合疑いで当該卸6社と国病機構の取引データは除外
公開日時 2021/12/03 11:10
厚労省は12月3日午前の中医協総会に、平均乖離率が約7.6%(薬価と市場実勢価格との差)との薬価本調査(2021年9月取引分)の速報値を示した。初の中間年改定となった前年の調査では8.0%、前回の通常改定の19年は8.0%で、21年は直近2年と比べて乖離率は0.4ポイント縮小した。前回改定では、コロナ禍の影響を勘案し、調整幅2%に一定幅0.8%を上乗せした。薬価調査結果が中医協に報告されたことで、22年度薬価・診療報酬改定をめぐる議論は年末の予算編成に向け、「改定率」をめぐる攻防が本格化する。
文末の「関連ファイル」に、09年以降の医薬品価格調査の速報結果の推移の図表を掲載しました。12月3日のみ無料公開、その後はプレミア会員限定コンテンツになります。
20年調査による投与形態別の乖離率は、内用薬8.8%(20年調査=9.2%、19年調査=9.2%)、注射薬5.6%(同5.9%、6.0%)、外用薬7.9%(同7.9%、7.7%)。
今回の薬価調査を報告するにあたり安藤経済課長は、独立行政法人国立病院機構が発注する医療用医薬品入札において、談合を行ったという疑いで、医薬品卸6社が公正取引委員会に調査を受けていることを報告。まだ「調査段階である」としながらも、適正な市場実勢価格を把握するという観点から、「今回の薬価調査の集計にあたり、公正取引委員会の調査対象となった医薬品卸6社と独立行政法人国立病院機構の取引データについては、念のため除外して集計した」と説明した。
主要薬効群別の乖離率は以下のとおり(カッコ内は20年調査、19年調査)。
内用薬:▽その他の腫瘍用薬4.6%(同5.1%、5.1%)▽糖尿病用剤9.0%(同9.5%、9.9%)▽他に分類されない代謝性医薬品8.2%(同9.1%、9.0%)▽消化性潰瘍用剤11.2%(同11.7%、12.3%)▽血圧降下剤11.9%(同12.1%、13.4%)▽精神神経用剤10.1%(同9.7%、10.0%)▽血液凝固阻止剤5.3%(同5.3%、5.6%)▽その他の中枢神経系用薬11.4%(同10.4%、8.6%)▽高脂血症用剤12.5%(同13.8%、13.9%)▽その他のアレルギー用薬12.2%(同13.6%、13.6%)――。
注射薬:▽その他の腫瘍用薬5.0%(同5.3%、5.0%)▽他に分類されない代謝性医薬品6.6%(同6.7%、6.3%)▽血液製剤類2.5%(同3.0%、3.3%)▽その他のホルモン剤(抗ホルモン剤含む)7.5%(同7.9%、7.8%)▽その他の生物学的製剤3.3%(同3.3%、3.8%)――。
外用薬:▽眼科用剤8.5%(同8.4%、8.0%)▽鎮痛・鎮痒、収斂、消炎剤8.7%(同8.6%、8.9%)▽その他の呼吸器官用薬7.2%(同7.6%、6.8%)――。
後発医薬品の数量シェアは約79.0%で、前年調査から0.7ポイント増となった。
◎支払側・間宮委員 卸6社の談合疑い「患者にとって大きな負担になる可能性がある」
薬価調査を受けた議論では支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)が、「前回改定の際に、コロナの影響で価格交渉のスタートが遅れて、乖離率が20年と19年とで同じ水準だったという意見もあったが、今回も見る限り毎年改定になっても、こうした状況は続くのではないか」と指摘した。
一方、支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、医薬品卸6社の談合疑いに触れ、「根本的に考え直すべきだ。患者にとって大きな負担になる可能性がある。本当の意味できちんとした議論を妨げることになる。二度と起きないようなことに着手して欲しい」と訴えた。これに対し安藤経済課長は、「こういったことを二度と起きないように、企業のコンプラ意識を高めることをしっかり行っていきたい」と応じた。
◎安藤経済課長「仮に事実なら公正で自由な競争を通じた価格形成を阻害する行為」
安藤経済課長は薬価調査結果の発表に先立ち、独立行政法人国立病院機構が発注する医療用医薬品入札において、談合を行ったという疑いで医薬品卸業者6社が公正取引委員会に調査を受けていることを報告した。安藤課長は、「現在も調査が進められている状況の中で、談合の事実認定はされていないが、仮に疑いが事実であれば、公正で自由な競争を通じた価格形成を阻害する行為であって、医薬品卸業者を所管する立場として誠に遺憾である」と述べ、「厚労省としても業界指導を含めて全力で対応する。今後その状況についても中医協に報告する」と強調した。