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厚労省・林前経済課長 納入価が適正なのか「疑問を持たざるを得ない」 川上、川下双方に苦言

公開日時 2021/11/08 04:59
厚生労働省の林俊宏・前医政局経済課長(現・子ども家庭局保育課長)は11月6日、ヘルスケア産業プラットフォームの講演会で講演し、薬価を決める“納入価”について、「適正なものになるのかということは、疑問を持たざるを得ない」と述べた。林課長は、川上、川下双方の課題を指摘した。川上取引については、後発医薬品など仕切価率が上昇し、一次売差マイナスが拡大していることを指摘した。一方で、川下取引では単品単価契約率は増加しているものの、単品総価交渉が大半であるとの認識を表明。医薬品の価値を反映する納入価だが、「本当にバラツキも大きい」とも指摘し、単品単価交渉を進める必要性を強調した。

◎仕切価・割戻し・アローアンスはメーカーと卸間で十分に協議 仕切価に反映

「そもそも、仕切価や割り戻しは交渉になっていますか、という話だ」-。林課長は、川上取引の課題をこう切り出した。2020年度の仕切価率は95.1%で19年度から0.2ポイント上昇。一方で、納入価率は91.4%で0.6ポイント下降し、一次売差マイナスが拡大している。特に、「後発医薬品」については薬価改定を理由に仕切価を引き上げている割合が多いと説明した。林課長は、「薬価がどんどん下がるからというが、メーカーにとっては自分たちの結果ではないか」とジェネリックメーカー側の課題も指摘した。そのうえで、「割戻しが縮小され、仕切り価も下がってくのが望ましい方向だと考えられるが、残念ながら横ばい状態で、メーカーも卸も割戻しに頼った商慣行は総量的にはなくなっていない」と述べ、一次売差マイナスが常態化していることを注視した。

こうした状況を踏まえ、来年1月から適用される予定の改訂流通改善ガイドラインでは、新たに「仕切価・割戻し・アローアンスについては、メーカーと卸売業者との間で十分に協議の上、なるべく早期に設定を行うこと」を盛り込む方針だ。割戻し・アローアンスについては、仕切価に反映したうえで、「整理・縮小」することも盛り込んだ。

◎仕切価の根拠を「卸が納入先に説明できる状態に」 割戻しも対外的に客観性を

林課長は、「メーカーだけでなく卸側も、一次売差マイナスと言いつつも、割戻し、アローアンスで取り戻せればいいというような認識でやられているところも多いのでは」と指摘。「(割戻し、アローアンスを)完全になくせ、と言っているのではなく、卸に対してどのような評価をして設定しているのかについて対外的にも説明可能なところまで客観性を持たせる必要があるのではないか」と続けた。「そこ(割戻し・アローアンス)に頼った価格交渉が常態化しているわけだが、納入価交渉が適正なものになるのかということは、疑問を持たざるを得ない。私だけでなく、疑問を持たれてしまうだろう。引き続き、整理をしっかりする必要がある」と強調した。例えば、低薬価品目などで流通コストや消費税を加えた結果、薬価を上回ってしまうような最終原価を設定すると、未妥結・仮納入を助長するなど、医薬品の安定供給を阻害する恐れがあることなどが想定されるため、最終原価の設定は不適切とされている。

薬価の内示後、メーカー・卸間の協議のための時間は短いことも想定されるが、「卸からすれば、ここが出発点。なぜ、この価格なのかを説明できるようにするのが、ガイドラインのコンセプトの一つ。メーカーがなぜこの仕切価を提示しているのかということについては、本来は当事者である卸が納入先に説明できる状態にしていく必要がある」と述べた。

◎卸が提示する価格「コストを意識して提示していますか」と問いかけ

川下取引について林課長は、「卸売業者が納入側に示す価格はコストを意識した価格を提示していますか。説明していますか」と問いかけた。流通改善ガイドラインでは、安定供給に必要な流通コストを考慮しない値引き交渉を行うことは、一次売差マイナスの一因となると指摘。「納入価の適正な設定のために、卸売業者は必要な流通コストを含む医薬品の価値を踏まえた価格を提示して説明を行う」ことを盛り込んだ。

林課長は、「納入価が適正な水準というのが重要な課題。薬価についてはこれで決まっている」と強調。卸売業者は「メーカーから示されている仕切価格とリベート、アローアンスに基づいて納入側と交渉するが、薬価は公定価格で医療機関や薬局の実入りは決まっている。医療機関や薬局側が赤字でも喉から手が出るほどほしいということはほぼない。財源も限られている中で狭い範囲で商売を成り立たせないといけないというのが卸売業界だということだと思う」との見解を表明。そのうえで、「卸も霞を食って生きているわけではない。民間企業なので一定の利潤を出さないといけない。コストを意識したうえでの価格設定をしないといけない。卸にとっては納入側からいただいているお金が収入のほとんどということになるので、流通コストを意識して医薬品の価値は形成される必要がある。実際の交渉過程でも提示していく必要がある」と続けた。

◎「単品単価のゴールは価値に見合った価格形成」 下期の再交渉を注視

また、単品単価契約だけでなく、「個々の医薬品の価値を踏まえた単品単価交渉を行うことを基本とし、少なくとも前年度より単品単価交渉の範囲を拡大していくこと」と盛り込んだ。林課長は、「単品単価のゴールは、個々の医薬品の価値に見合った価格形成だ」と指摘。「薬価改定のルールの前提は、ひとつひとつ価格を決めたものを調査して加重平均し、そこの価格に2%乗せたのが薬価になる。何の操作もないが、本当にバラツキも大きい」と述べ、単品単価交渉の重要性を強調した。現場では単品単価契約と単品単価交渉の違いを明確にする必要があることから現在調査を進めており、次回の流通改善懇談会で報告する方針であることも紹介した。このほか、未妥結減算の導入で9月までに一度仮妥結し、下期に再度交渉のテーブルについているケースが増加していることを指摘した。

流通改善については今年6月に閣議決定した「成長戦略実行計画」で、「医療用医薬品の流通構造には、製薬メーカーが卸売業者に販売する価格が卸売業者から医療機関・薬局に販売する価格を上回る商慣行や、医療機関・薬局が購入する全品目の価格・割引率をまとめて交渉する商慣行が存在することから、これらの改善に向けて、流通改善ガイドラインの見直しを含めた対応策の検討を行う」ことが明記されている。林課長は、「政府の中でも課題意識がある」と説明した。これに沿った形で、9月に公表された医薬品産業ビジョン2021でも「医薬品の価値に基づく納入価の提示と単品単価交渉の促進」が盛り込まれている。
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