Meiji Seikaファルマ・小林社長 共同開発体制を抜本的に見直し 会社選定の基準やデータの相互査察など
公開日時 2021/07/08 04:52
Meiji Seikaファルマの小林大吉郎社長は7月7日の事業運営説明会で、ジェネリック事業における共同開発体制を抜本的見直す考えを明らかにした。同社は、共同開発会社の選定に際し、生産管理体制、品質保証体制の事前確認を実施する。加えて生データの確認を共同開発契約に盛り込むことを共同開発企業に許諾させる方針だ。生データの確認は双方の企業が相互査察で行う考え。小林社長は、「今回の件で共同開発は一段と手間が増える。業界にとってマイナスだ」と述べながらも、「Meiji Seikaファルマとしてお約束したことはしっかりやっていきたいと思う」と決意を表明した。
◎小林化工問題「業界にとって長期甚大な影響がある」
小林社長は、小林化工問題をめぐる一連の問題を振り返り、「この問題は非常に大きかった。弊社が被った打撃以上に、恐らく医薬品業界、後発品業界にとって長期に甚大な影響がある」と見通した。一方、小林化工の申請資料に虚偽の記載や、虚偽の監査証明書が作成され、こうしたデータを用いて共同開発品の申請を行い、その結果、業務改善命令という行政処分を課されたことについては、「偽造、捏造されたデータであっても、それに基づいて共同開発して申請してしまったという事実がある」と認めた。その上で、厚労省に提出した業務改善計画において、共同開発会社の選定からデータの信頼性確保に至る各段階で改善策を明示したと説明。その内容が7月2日付で厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、監視指導・麻薬対策課長の連名で発出した、いわゆる2課長通知に反映されていることも強調した。なお、2課長通知は、「後発品の共同開発について、自社開発と同様、試験データや資料を作成・把握する責任がある」ことを周知したもの。
◎コスト増、手続き増は避けられず
小林社長は、ジェネリック事業における共同開発の意義に触れ、「もともとは簡素にお互いの生産能力を生かし、販売能力を生かして、量的な拡大をお互いに図ろうというのが本来の枠組みだった」と述べ、その目的が「適正化に資するシフト」だったと振り返った。ただ、今回の事件によって、「共同開発そのものがコスト増、手続き増となる。確かに品質マネジメントは良くなったが、その中で量的拡大を図れるかというところが後発品企業に突き付けられた課題だ」と指摘。今回の措置が及ぼす業界影響に触れながら、「それでも我々はできると考えている」と強調した。また、今回の事案を経験した当事者の立場と、唯一の製薬協加盟社である立場から「品質マネジメントを1社1社がしっかりやって、その課題について業界として情報共有しながら取り組んでいくことが必要だ」との認識を示した。
Meiji Seikaファルマがこうした方向性を示したことに加えて、厚労省の2課長通知も発出されており、今後の共同開発については他社も同じような対応が求められることになりそうだ。
◎小林化工への賠償「物的損害について請求することを考えている」
このほか小林社長は、小林化工への賠償請求について、「被った物的損害については計算しているので、請求することを考えている」と述べ、その準備も終わっているとした。
◎2023中計基本コンセプトに「事業ポートフォリオの再構築」
小林社長はこの日の事業運営説明会で、医薬品セグメント2023中計基本コンセプトに「事業ポートフォリオの再構築」を掲げた。毎年薬価改定やコロナ禍における患者の受診行動の変化、さらには既存モダリティの高度化やデジタル化の推進など外部環境の変化を踏まえたもの。Meiji SeikaファルマとKMバイオロジクスの一体的な事業運営として、感染症プラットフォームの強化などに取り組む方針を示した。なお感染症プラットフォームの強化では、医療上必要な医薬品の安定供給を目的に、ペニシリン中間体(6APA)の国内生産を岐阜工場で実施する方針だ。なお、医薬品セグメントの2023年連結計画は、売上高が2090億円(20年度比14.7%増)、営業利益は185億円(同3.2%減)を見込んでいる。