ノバルティス 先駆け指定のゾルゲンスマ審査遅延で再発防止策 薬食審部会に報告
公開日時 2020/12/04 04:51
厚生労働省の薬食審再生医療等製品・生物由来技術部会は12月3日、脊髄性筋萎縮症に対する遺伝子治療用製品・ゾルゲンスマが先駆け審査の指定を受けたにもかかわらず、申請企業のノバルティス ファーマの不適切な対応で審査に1年4か月を要した問題に関して、同社がまとめた再発防止策の報告を受けた。同省によると、部会の委員から「全く不十分」との意見はなかったものの、文言修正などが求められたため、修正確認と取扱いを部会長に一任することになった。同省は再発防止策がしっかり実施されることが重要だとして、引き続き同社の対応を確認していく方針。
ノバルティスの開発品は現在、先駆け審査の対象から除外されている。同省によると、再発防止策が了承された後は、防止策の実施状況を確認しつつ、ノバルティスからの先駆け審査指定の希望は受け付ける予定。「先駆け指定の審査の俎上にはのせるということ」(同省担当官)としている。
■データの信頼性に係る問題あった際の当局報告プロセスを新設
ノバルティスはゾルゲンスマで、事前の先駆け総合評価相談を十分活用しなかった。加えて、申請後にデータ改ざんが発覚し、信頼性調査などにより、審査期間が長期化した。日米同時申請だったが、結果、米国での承認が日本よりも約10か月先行した(米国:19年5月、日本:20年3月)。この問題により、先駆け審査の指定取消の要件が厳格化された。
ノバルティスは再発防止策の中で、今回の問題の原因として、▽スイス本社の導入品に関する信頼性の確認体制の不備▽日本法人の体制の脆弱さ(迅速審査への対応遅延、資料の信頼性の確認不備)▽日本法人と本社との連携体制の脆弱さ(迅速審査への対応遅延、データ改ざん情報の入手遅延)――を挙げた。
今後の対応としては、本社の導入品に関する信頼性の確認体制を構築するほか、日本法人の対応として▽迅速審査に対応できる体制を確保した上で承認申請の意思決定を行う▽承認申請資料の信頼性を確認するプロセスの構築――に取り組む。
日本法人と本社との連携強化も図り、申請データの問題を迅速に社内共有し、各国の規制当局に報告するプロセスを構築するとした。例えば、データの信頼性に係る問題があった際の当局報告プロセスを新たに設け、原則「データの信頼性に関する重大な問題(疑いの段階を含む)が認められた場合は、5労働日以内に当局に報告する」としている。