日医・中川会長 かかりつけ医による「オンライン健康相談」を提案 政府のデジタル化対応も視野
公開日時 2020/10/08 04:51
日本医師会の中川俊男会長は10月7日の定例記者会見で、かかりつけ医がオンライン健康相談の支援を行うことなどを提案した。かかりつけ医が診療行為の一環としてオンライン健康相談を行った場合は、今後診療報酬で適切に評価することも提案した。中川会長は、「技術進歩とともに、オンラインのできる範囲を着実に広げていくべきではないか」と表明。菅内閣がオンライン診療の恒久化を掲げるなどデジタル化の推進を掲げるなかでの提案となったが、中川会長は、「菅内閣の方針に呼応して言っているのではない。オンラインやデジタル化の技術進歩は急速で、時代の趨勢だ。それに抵抗しているという誤解があるので、誤解を解いて払しょくしたいということで、提案をしている」と述べた。
現在公的保険外のサービスとして実施されているオンライン健康相談について中川会長は、「利用者の安心と安全を守るため、適切な仕組みのもとで実施されるべき」と強調した。そのうえで、国として定義を明確化するほか、省庁横断的な指針の作成、業界ガイドラインの作成、利用者リテラシーの向上が急務と指摘。あわせて、なりすましなどのリスクがあるなかで、医師、患者双方の本人認証の徹底など、システム面での整備も必要だとして、国に対応を要請した。
◎「オンラインお薬相談」は医師と薬剤師で オンライン出産・育児相談や栄養相談も
オンライン健康相談の定義については、医療法上の医師と、それ以外の業務範囲の定義を照らし合わせ、医師・歯科医師のみが行うものを「オンライン健康相談」と定義。それ以外を「オンライン生活相談」などの名称として定義を明確化する考えを提案した。このほか、医師に加え、薬剤師らが対応する「オンラインお薬相談」、保健師・助産師・看護師らが対応する「オンライン出産・育児相談」や、「オンライン栄養相談」などの区分も示した。
◎患者や家族へのオンラインでの健康相談は「かかりつけ医の役割」 中川会長
現行制度では、医師以外の職種が「受診不要の指示・助言」を行えることなどへの問題意識も示した。中川会長は、「医師でなければできない健康相談が当然ある。色々な職種がやっているのは適切でないものも散見される。医師が責任をもって健康相談に対応できるシステムをオンラインの技術進歩とともに拡大してもいいのではないか」との考えを表明。「患者や一般の人にとって、受診するほどではないが、医師に健康相談をしたい、家族のことなど相談したいというときに、オンラインで積極的に相談にのりますよ、という姿勢も大事ではないか」と述べ、かかりつけ医が積極的にオンラインを活用して健康相談にのる姿を描いた。
◎診療報酬上の評価必要 かかりつけ医以外は「自由料金」も一考
診療報酬上の評価についても、かかりつけ医が一連の診療行為の下で行う場合の適切な評価の必要性を指摘。オンライン診療のプラットフォーム以外の手段でも、かかりつけ医が前向きに取り組めるような環境整備の必要性にも言及した。一方で、受診したことのある医師に、診察ではなく健康相談のみを受けるケースや、初対面の医師などでは、「自由料金」とすることも提案した。
◎中川会長 「菅首相とICT、デジタル化を医療に導入しようという姿勢は同じ」
このほか、菅内閣の掲げるオンライン診療の恒久化については、「菅首相の方針と我々は全面的に齟齬があるというわけではない。お互いに少しでも、ICT、デジタル化を医療に導入しようという姿勢は同じだ」などとも述べた。
なお、オンライン診療について日本医師会は、「解決困難な要因によって、医療機関へのアクセスが制限されている場合に、適切にオンライン診療で補完する」との考えを示している。具体的には、離島やへき地など地理的にアクセスが制限されているケースに加え、難病・小児慢性疾患で診察が限られているケースや、在宅医療や出産前後などで医療へのアクセスが困難であるケースをあげる。一方で、「勤務先や仕事の都合などで、時間的な制約から継続した通院が困難」であるケースなどでは、予約診療で対応できるとして、「利便性のみ優先するオンライン診療の拡大は、医療の質低下につながりかねないため、容認できない」と主張している。