米FDA 新型コロナ治療で回復期血漿療法に緊急使用許可
公開日時 2020/08/25 04:51
米国食品医薬品局(FDA)は8月23日、新型コロナウイルス感染症の治療を目的として、回復期血漿療法について緊急使用許可(EUA)を発行した。FDAは、「既知の潜在的なベネフィットが製品の既知の潜在的なリスクを上回ると結論付けた」としている。米国ではすでに7万人以上がこの治療を受けているが、臨床試験が進行中で、十分なエビデンスがないと指摘する声もあがっている。11月に大統領選を控えるなかで、こうした影響も指摘されている。
回復期の患者の血漿や免疫グロブリンには、ウイルスを中和する抗体が含まれており、重症患者に投与することで、重症化の抑制効果などが期待されている。インフルエンザや重症急性呼吸器などの病気症候群(SARS)、および中東呼吸器症候群(MERS)などで効果があったとの報告がある。
米・メイヨ―・クリニックがイニシアティブをとる拡張アクセスプログラムのうち、初期に登録された約2万例を対象に解析を実施した。研究は、単群、オープンラベルで、安全性の検証を目的としており、有効性の検証を目的として設計されていない。
有効性についてpost-hoc解析を行ったところ、80歳未満で人工呼吸器が挿管されておらず、診断から72時間以内の患者(1018例)では、高力価の血漿投与により死亡率が37%低減したという(p=0.03)。7日後の死亡率は高力価で6.3%で、低抗体価の11.3%に比べ、有意に高力価と死亡率低下の相関関係が認められた (p = 0.0008)。
重篤な有害事象(SAE)としては、輸血反応や血栓性イベントが1%未満、心臓イベントが3%未満で報告された。血栓性イベントや心臓イベントとの因果関係は否定されている。そのうえで、投与リスクとして、輸血関連急性肺障害(TRALI)、輸血関連心臓過負荷(TACO)、アレルギー/アナフィラキシー反応、熱性非溶血性輸血反応、輸血感染症、溶血反応をあげ、ベネフィットがリスクを上回ると結論付けた。
アレックス・アザール保健・福祉局長官は、「FDAの回復期血漿に対する緊急認可は、COVID-19から命を救うトランプ大統領の取り組みにおける画期的な成果」とのコメントを表明。スティーブンM.ハーンコミッショナーは、有効性を強調したうえで、「研究者と協力して無作為化臨床試験を続け、新規コロナウイルスに感染した患者の治療における回復期血漿の安全性と有効性の研究を続ける」としている。
米国では、新型コロナ治療薬としてレムデシビルがEUAを受けており、2剤目となる。なお、EUAは正式承認とは異なり、米国には新型コロナ治療薬として承認を受けた薬剤はない。