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熊本大・松下教授 HIV未感染ハイリスク者への抗HIV薬予防投与「早く導入して」

公開日時 2019/10/24 03:50
日本エイズ学会の松下修三理事長(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 臨床レトロウイルス学分野教授)は10月23日、ギリアド・サイエンシズ主催のセミナーで講演し、「暴露前予防内服」について、国内での早期承認を求めた。暴露前予防内服とは、HIV未感染のハイリスク者が予防的に抗HIV薬を服用して感染リスクを軽減するもの。現在までのところ、国内では未承認だが、海外では「新規感染が明らかに減っている」と指摘。国内の新規感染者を減らす一つの選択肢としての導入を求めた。

この予防内服は、PrEP(Pre-exposure prophylaxis、プレップ)と呼ばれる。HIV未感染のハイリスク者が抗HIV薬ツルバダを1日1回1錠の内服を継続することで、90%以上の感染予防が可能になる。既に論文にもなっている。PrEPは米国など世界40か国以上で承認され、世界保健機関(WHO)も2015年に「全てのHIV感染ハイリスク群にPrEPの選択肢が提供されるべき」との考えを示している。例えばロンドンでは、PrEPや医療機関の連携システムの整備などにより、ゲイ・バイセクシャル男性のHIV新規感染診断数がほぼ半減したという。

■ギリアド 日本でのツルバダのPrEP適応追加に「社内で検討中」

ギリアドは質疑応答で、日本では同学会が18年8月に、ツルバダのPrEPの適応追加に関する要望書を厚労省に提出し、同社にも連絡が入っていると説明した。そして、日本でのツルバダ予防投与の適応追加について、「社内で検討中であり、現時点では申請していない。今後の予定は未定」とした。

松下氏は、世界でPrEPの有効性は認められていることから、薬事承認を待たずに保険適用される公知申請で差し支えないとの考えを示すとともに、「PrEPがあればHIVに感染しなかった人が年間何百人かはいると思う」と指摘した。また、「(メーカーが学会要望から)1年もかかって検討しているとの話は良いかどうかという問題はあるが、厚労省は前向きだと思う。我々のコミュニティも学会も、できるだけ早く導入してほしいと思っている」と述べた。現在はツルバダを個人輸入して予防的に服薬しているハイリスク者もいるようだ。

■Sexual Health診る施設の連携システム 東京五輪契機に整備を

松下氏はこの日、「12月1日は世界エイズデー ~東京オリンピックを前に性感染症(HIVを含む)のアウトブレイクにどう備えるか~」と題して講演した。「性感染症の予防は、自己責任だけではなく、正しい知識のアップデートとともに性の多様性を受け入れる社会であることが求められる」と強調。「世界をみればわかる通り、(社会が)自己責任とすればするほど性感染症は増えていく実態がある」と述べ、社会全体の性感染症に対する正しい理解が感染予防や差別・偏見をなくすことに重要との認識を示した。

オリンピックなどの国際的大規模イベントでは感染症流行のリスクが高まる。現在、厚生労働行政推進調査事業費(エイズ対策政策研究事業)「2020年五輪大会に向けた東京都内のHIV・性感染症対策に関する研究(代表:田沼順子)」の中で、東京五輪を契機に、▽Sexual Healthを診る施設・専門医との連携システム▽多様性への対応(性の多様化、多言語、多文化)▽新しい検査体制(利用者目線での検査環境の再整備)▽HIV診断から治療までの期間短縮▽PrEP――を整備し、レガシーを構築することが検討されていることを紹介しながら、「すばらしい考え。私も、学会としてもサポートしたい」と述べた。
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