Alnylam Japan・中邑社長 疾患啓発に注力 初のRNAi治療薬・オンパットロ上市で
公開日時 2019/09/17 03:50
Alnylam Japanの中邑昌子代表取締役社長兼アジア地区シニア・バイスプレジデントは9月13日、国内初のRNAi治療薬・オンパットロ点滴静注(一般名:パチシランナトリウム)の上市を受け、同社が主催したメディアセミナーで、「この疾患で苦しんでいる人にできるだけ早くこの薬を届けたい」と述べ、疾患啓発と患者の掘り起こしに力を入れる考えを示した。同剤は、同社が9月9日に発売。同社にとって、国内で上市・販売した初の製品となる。
オンパットロ点滴静注は、国内初のRNAi治療薬。肝臓で疾患の原因となるトランスサイレチン(TTR)のメッセンジャーのmRNAを分解し、発現を抑制することで、疾患の症状改善や進行を停止、遅延させるとされる。効能・効果は、「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」とする。
同疾患は、適切に判断されず、確定診断まで2、3年がかかることも指摘されている。このため、中邑社長は、「弊社の営業体制は小規模だが、効果的なチームを構築し、できるだけ早く患者を見つけ出したい」と意欲を見せた。営業体制は、東京1拠点で、全国をカバーする考え。現在もMRの採用を進め、営業体制の構築を進める。
今後について同社は、遺伝性疾患、心血管および代謝性疾患、肝感染症、中枢神経系疾患/眼疾患の4領域に注力する考え。今回上市されたオンパットロについては、適応拡大を目指すほか、9品目のパイプラインを有する。このうち急性肝性ポルフィリン症の適応を目指すGivosiranは、米国とヨーロッパですでに申請を行っており、日本では2020年中に申請する考えを示した。
◎長崎国際大・安東教授 新たな選択肢を歓迎
同日のセミナーで講演した長崎国際大学の安東由喜雄教授は、「これまで外科的にやってきたことを内科的にやることができる」として、新たな選択肢の登場を歓迎した。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは、肝移植とTTR四量体安定化剤による薬物治療がある。すでに内服薬が上市されているが、点滴静注製剤であるため、「患者の利便性が生じるが、同剤では薬剤の効果を確実に届けることができる」と述べた。
同疾患は、全身の組織・臓器にアミロイドが蓄積することで、様々な症状が現れる遺伝性の全身性アミロイドーシス。徐々に歩行困難や寝たきりの状態になり、治療が行われなければ発症からの平均余命は約10年とされている。