コニカミノルタと革新機構 米国の遺伝子診断会社を買収 がんのプレシジョン・メディシンに本格参入
公開日時 2017/07/07 03:50
コニカミノルタと官民ファンドの産業革新機構は7月6日、米国の遺伝子診断会社Ambry Genetics(AG社)を共同で買収すると発表した。10月に実施する予定で、買収額は最大で10億ドル。プレシジョン・メディシン分野に本格参入するのが狙い。コニカミノルタが持つ腫瘍細胞に発現するたんぱく質を高感度に定量的に検出する技術と、AG社の世界最先端という遺伝子診断技術を融合、たんぱく質、遺伝子レベルでがん患者を高精度に層別できる技術で差別化を図る。それにより、国内外での創薬、治験の効率化、患者の最適治療を支援する事業を行う。併せて、関連技術・能力のさらなる買収も念頭に、5年後にこの事業で世界売上高1000億円、営業利益率20%を目指す。
AG社は1999年に設立され、乳がん、大腸がんなどの遺伝子診断事業を北米で行い、売上高は2億8800万ドル(2016年6月期実績)。コニカミノルタと革新機構は、AG社の全株式取得に8億ドルを支払い、その後2年のAG社の業績に応じて最大2億ドルの追加支出が発生する可能性がある。コニカミノルタが60%、革新機構が40%を出資する。
買収によって展開する事業は、製薬企業とがん患者が対象。製薬企業に対してはバイオマーカーの発見による創薬の効率化のほか、対象患者の高精度の層別化による新薬開発の成功率の向上、治験の短縮化を支援する。患者に対しては患者特性に合った治療薬の選択、治療法の確立を支援する。それらにより研究開発コストの低減や患者の最適治療を実現し、患者の治療や生活の質の向上、医療費の削減といった社会課題の解決につなげたい考え。
日本では2018年度から、AG社で実績のある乳がん、卵巣がん、大腸がんなどを対象にした遺伝子診断サービスを開始する予定。コニカミノルタが持つ国内の病院チャネルに乗せて普及を図るという。また、日本人特有の遺伝子情報を大規模に解析することを通じ、医薬、診断、医学の分野のイノベーションに生かすことも目指す。
コニカミノルタ・山名社長 社会課題の解決により高付加価値を創出
コニカミノルタの山名昌衛社長(写真左)は、東京都内で行った記者会見で「プレシジョン・メディシンに本格参入する大きな決意を固めた。徹底的に、今後10年、20年、この領域は必ずやり遂げるということだ。グループ戦略上、大変大切な領域である」と、この事業に対する強い意欲を示した。
その上で、同事業について「社会課題を解決することで、事業の付加価値はついてくる、当社にとっても高付加価値になる、という形で進めていく」と説明。同事業による患者の最適治療、製薬会社の新薬研究開発の効率化の支援を通じて「医療費削減という国が抱える大きな社会課題を解決していく」と強調した。
産業革新機構の勝又幹英社長(写真右)は、会見で「プレシジョン・メディシンの日本国内の基盤整備、関連事業の確立、普及に貢献したい」と話したほか、関連産業を巻き込んだ国内外の展開に期待を寄せた。